子育てに見る交渉のかんどころ

この間の話のつづき。


ところで、利害が対立する場面での対話とは、交渉を意味する。よって、私が子供を保育園に連れて行くとき、彼は行きたくないというから、それは交渉であるといえる。そう考えた時点で、話しはかなり整理されてきており、つまり子供がダダをこね、泣きじゃくるのは、交渉の手段である。


交渉について、仕事などで何度かある経験をもとにポイントを書くと、以下の4つのステップに分けることができる。

  1. まずは、相手の要求を知ること
  2. そして自分の要求と同じである部分は、相手方と同じであることを確認する
  3. まったく利害が反する部分については、客観的な事実やお互いのパワーバランスを基に妥協点を探る
  4. 同意した事項については書面に落とすなどして、確実な同意を得る


1,2については、一見あたりまえのことに見えるが、相手の本当の要求というのは、実は本当によくよく聞かないとわからないものである。このプロセスをうっかり忘れると、勘違いに基づいて、本当はする必要のない議論が延々と繰り広げられることになる。子供の場合、この「本当の要求」というのが自分でもわかってない場合が多い(大人でもたまにそういう奴はいる)から、このプロセスは一段と大事であるといえる。
うちの子供もまったくもってそうで、何故行きたくないという主張をするのか、と問うても、だって行きたくないもん、としかいわない。強敵である。とはいっても、まあ何度も聞いてたら段々わかってくる。うちの場合はたぶんだけど「できれば歩きたくない」「寒いから外に出たくない」この2つではないかと思う。


普通交渉ごとで一番もめるのは3である。このステップではあまり定石というものはないのが実際であるが、概ね以下の通りである。
3-1.まずは客観的な事実とルールを確認する。お互いが合意できそうな原則を探る。例えば相手方をだますつもりはないとか、契約締結することによるメリットの確認とか、ただし契約内容はフェアであるべきとか。である。ここで合意できないひとはそもそも話し合いの土台に乗る意思がないわけで、話すだけ無駄ともいえる。
3-2.次にお互いの主張に関してできるかぎり客観的に論理的正当性を主張する。ここで、交渉の経験が無い人などは振り落とされることになる。つまり、相手方の「普通はこうだ」という主張に納得してしまってはいけない。また、「普通はそうかもしれないがおれはこう思う」みたいな主張をする人も、最終的には一般的と思われる軸からの乖離を考えて落としどころが探られるから、同様である。この段階でひたすら感情的になり、同じことばかり言う人は話しを長引かせることはできるが、何も決まらず、この論理的正当性を追い求めるプロセスはあまり意味を成さない。
3-3.そして最後にお互いのパワーバランスを主張するためのカードを切っていく。例えば、「そこまでいうならもうやめる」というのが最もわかりやすいカードで、それが使える側は強い。もっと細かいもので言えば、「ほかの点では自分が譲った」などの相手に対する「貸し」なども利用される。この段階を経て一般的な軸からの乖離幅を決定するわけである。

ここで、子供が保育園に行く/行かないの話しでは、3-1.事実の確認がもっとも重要である。保育園に行くということを、子供の意思とは切り離し、ルール化しなければならない。つきつめて言うと先日書いたとおり親の責任ということだと思っているが、それをわかりやすく、事実として伝える必要があろう。3-2については、論理的に説得しても子供は感情的に反発するので、あまり意味をなさない。3-3のほうがより重要である。子供はまだひとりで家に入れないので少し卑怯だが「そんなに行きたくないならひとりで帰れ」というのが今の段階では最強のカードとなる。ただしこのカードは当然家の外でなければ使うことはできない。


4はまあ、上に書いたとおりで、せっかく同意したのに1日たつと忘れちゃって、「やっぱり・・」とか言い出す奴ほんといるんです。ちゃんとその場か遅くとも同日中に書面にして、お互い確認しましょう。ということ。

子供はまだ字が読めないので、口頭で何度か確認することになろう。


最後に、もう一度今度は子供相手に対象を絞って交渉のポイントをまとめると以下の通りとなる。

  • 相手の要求をしっかりと理解する
  • 保育園に行かなければならないというルールを事実として伝える(お前のためだ、とか主観的にならないように注意)
  • 親の交渉力を高めるためにはとりあえず外に連れ出す

いかがでしょうか。