数学というバイアス−まぐれ


最初、あるトレーダーが別のより儲けているトレーダーを指差し、あいつが勝ってるのはただのまぐれだと言って自尊心を満足させる本かと思って、飽き飽きしそうになったが、一応最後まで読んでみてよかった。

東京大学物語に矢野先生という数学教師がでてくるのだが、その言葉で「人生で役に立つ学問は数学だけだ」みたいなのがある。確か5巻か6巻だったと思う。この本を読んでその言葉を思い出した。


まず、学問がいかにして人生に役立つかという点だが、私はこれをバイアスとしての効能だと考える。つまりものごとを見るにあたって、そのものの見方を提供してくれるのが学問だと思う。学のない人のものの見方は一般に単調で情緒的で先進性がない。社会の発展に貢献しない。


しかしながら一方で、学問というのはそれ自体がバイアスの集合体のような側面を有する。ただ数学のみを除いては。


数学の優れているところは、そのすべてが人類が創り出した仮定の概念の中で完結しているところだと思う。だから正解があり、定理がある。他の学問もあたかも正解があるような顔をしているが、あれはインチキだと思う。


この本は、数学のバイアスで世の中を眺めるとどうなるか、という本だと思う。情緒をコントロールして、事実を客観的に把握することは幸福への道でもあると思う。