森永卓郎ってどうなの

私が個人的に、ほんとにこの人は知識人なのだろうかという点で、日ごろ嫌疑の眼差しでもって観察している人が何人かいる。

そのうちの一人がタイトルの森永卓郎氏である。

あんまり詳しく知らないし、本とかも読んだことないのだが、この人ってどうなの。

ちょっとこれを見てほしい。
原油バブルは近いうちに必ず崩壊する / SAFETY JAPAN [森永 卓郎氏] / 日経BP社
タイトルのとおり、原油バブルは近いうちに崩壊するだろうという趣旨の彼のレポートというか記事というかである。


その論旨たるや惨憺たるものに思え、即ち、原油バブルが崩壊するのは「崩壊しなかったバブルは過去ないから」であって、

わたしは、近い将来、原油価格が劇的に暴落する事態が起きると考えている。なぜなら、石油価格を高騰させた最大の要因は投機だからだ。投機にもとづく価格上昇、すなわちバブルは必ずはじけるのである。

原油の値上がりをバブルだと断定する根拠は、「製造原価と比して著しく値上がりしているから」だそうだ。

原油の製造原価は、1バーレル=3ドルといわれている。昨年初めの価格である50ドルで売ったとしても、47ドルものもうけが出る。それが150ドル近くにまで暴騰したのだから、これはバブルとしか言いようがない。

そして、はっきり言ってこの2つのことしか書いてない。


これでいいのか?(反語)


そもそも、近代経済における価格決定のメカニズムとして、製造原価を持ち出す人を私はあまり知らない。基本は需給である。

例えばこの考察は非常に興味深い。
石油価格の上昇を考える−溜池通信
石油の有限性、及び政治性に着目し、需要曲線及び供給曲線がそれぞれ直線ではない可能性を示唆している。それぞれが曲線であれば接点も複数になりえるから、価格の均衡点も複数になり得るというひとつの可能性である。

こういった考察を示してこその経済アナリストなりエコノミストなりだと思うのだが。


また、「投機的な原油の値上がり」という考え方自体なんとも言えない香ばしさがある。これって単にドル(をはじめとする通貨の価値)の下落じゃないの?その証拠に金などのインフレ耐性の強い商品も原油と同程度に値上がりしており、金で測った場合の原油価値は別に大して変わってないわけで。投機マネーがどうのこうのっていうのもまあなくはないのだろうが、要は世界的なインフレなわけで。
石油の価格は実は上がっていない? - GIGAZINE
こんなこと常識だと思うんですけど。


大体はじけたものを事後的にバブルと名づけるわけであって、弾けたことのないバブルがないって言う理屈はトートロジーである。そんなことを大声で言われてはこっちが赤面してしまう。


そもそも、随分下落が進んだこの状況(もうすでにピークから2割以上下げてる)になってからこんなことを言い出す姿勢もなんだかあざといような気がする。もしや明日にでも、さも急落を言い当てたような顔をするのだろうか。


amazonで見てみると、
新版 年収300万円時代を生き抜く経済学 (知恵の森文庫)
など、低所得者向けのような本が代表的なようだ。
低所得者に迎合するあまり、そのワイドショー的感覚にあわせて極端に議論を単純化させすぎて、わけがわからなくなってしまったのだろうか。
果たしてこれが守るものができた人の弱さというやつなのか。


もしここをご本人様がご覧になっていたら(絶対ない)、是非一度ご反論を頂戴したいものである。いや素直な意味で。

ということで一縷の望みを持ってトラックバックを送ってみたい。