日本株が上がると思う理由3つ

みなさんが意外と金融に興味があるということがわかったので、日本株の動向についてちょっと講釈を垂れてみるぞ。

まず最初に、最後にももう一度言うけれど、くれぐれも投資は自己責任でお願いしたい。


さて、まず、しばらくの間、円高のトレンドが続くと思ってる。理由はいくつかあるが、ひとつは対ドルで見た場合の話。昨日、はてなーにもわかる金融業界の栄枯盛衰※追記あり - よそ行きの妄想で書いたように、現状の米国の経済力を背景にした、ドルを基軸通貨とするドル本位体制はかなり怪しい様相である。たとえこの波を乗り切ってドル本位制をしばらく続けるにしても、そのためにはロシアとかアラブとか中国とかの力を借りざるを得ないわけで、米国の影響力というのは相対的に低下する。通貨の価値というのは国家の信用なので、米国の影響力が低下すればドルは下がるし、ドルが低下すれば円は高くなるという寸法。
次に、世の中はいまインフレまっしぐらである、日本を除いて、という話。これも相対性の話だが、日本はご存知の通り長引く不況の煽りでデフレに喘いでいたわけで、いま世界経済を直撃している資源価格高騰によるインフレの影響が小さい。さらに欧米は、金融業界の壊滅打撃を和らげる資金供給と、景気不安対策の利ための下げを行いインフレに拍車をかけている。
インフレというのは要は貨幣の価値が物価に対して相対的に下落することだから、他所の国がインフレに突入するなかで、日本のみがそれを免れるようなことになれば、円の価値と言うのは相対的に上昇することになる。


ここで、円高は輸出命の日本企業にとって癌であるからして、円高になったら日本株なんか下がりこそすれ騰がるはずがないという感想を抱く御仁もいらっしゃることと思うが、そんなことは実に表面的な問題である。そもそも普通に考えて自国通貨の価値が下がった方がメリットが大きいなんてそんなあほな話があるはずがない。自国の通貨価値が騰がるということは、要は自国の経済的な力≒戦力が高まるということであって、直接的に言うと、海外の優良企業をいまよりもずっと安い値段で買収できると言うことを意味する。*1
確かに国内で生産して海外に輸出するというモデルだったら、円高によって製造原価が相対的に高くなってしまって、利益がでなくなるか、ものが売れなくなって困ると言うことはあろうが、そんなことは生産を現地で行えばいいだけの話であって、立派な会社様はとっくに始めている。最終的な会計処理は円換算だから、円高が輸出企業の業績に悪影響を及ぼすということは間違いではないが、上で書いたようなメリットの方が大きいはずだ。


折りしも日本は、少子高齢化による人口構造の変化と人口減少の問題を世界に先駆けて発現させ、国内需要が完全に停滞してしまうわ生産性は落ちるわの行き詰まり状態である。
そうした状況下の日本企業にとって円高はまさに渡りに船であって、日本企業は、海外企業の買収→現地労働力の搾取という帝国主義路線を再び歩み始めるだろう。というか徐々にしてる。この行為に持続可能性がまったくないことは既に歴史が証明しているわけだが、とりあえずガンガン攻めてるうちは景気がいいというのもまた事実なのである*2
ということで、これが1つめ。円高による日本企業の攻勢。


2つめは単純で、インフレ不況と資源価格高騰による海外企業の競争力低下。
インフレは企業のコストを押し上げ、競争力を低下させる。
また、資源価格が高騰していると言うことは、エネルギー効率という競争力の重要性が高まると言うことを意味するが、日本といえば省エネ、省エネといえば日本なのであって、このエネルギー効率重視の流れは追い風になり得る。


最後に、大体からして今の日本株は割安すぎるという件を。東証全銘柄平均でPBRが1倍を切るとか、株式の配当利回りが国債の利回りを上回るとか、いったい全体どういう理屈がつけられるのか。いやつけられない。
これは市場経済の失敗である。需要の絶対量が減少していくさなかにおいては、価格均衡理論とやらはまったく機能しないということだ。
ただ、これは問題が明確なだけに、いずれ解決される問題だろう。株式市場を廃止してしまって理論株価での取引を行うか、若しくは海外の市場とくっつけて現地の人に日本株を売りつけることで需要を創造したらよろしい。そうして問題の解決をはかれば、この極端な割安状態は是正されるだろう。
はい、3つめ。過度な割安状態の是正。


ということで、以上をまとめると、グローバル化の耐性と体性がある会社*3で、割安な銘柄を適当に買っておけばいいんじゃないかなということなんだが、最後にもう一度。
くれぐれも投資は自己責任で。
というか話がこんなに単純だったら誰も苦労はしないわけで、あまり真に受けないようにお願いします。よろしくどうぞ。


※関連
はてなーにもわかる金融業界の栄枯盛衰※追記あり - よそ行きの妄想
はてなーにもわかる米国政府による不良資産買取という「おわりのはじまり」 - よそ行きの妄想

*1:ちなみに言えばGDPだってドル換算なんだから、円の価値が相対的にあがればGDPだってあがることになり、主要先進国なんとかランキングとかで惨めな思いをする機会も減る。

*2:日本においては、帝国主義思想の放棄が、敗戦による占領下で強制的に行われたため、同じ失敗を繰り返す土壌があるように思う。

*3:とりあえず既にグローバルでご活躍されている会社であれば間違いない。