経済政策(笑)

先日のふろむださんのエントリーを拝見して、それってただの政策金利誘導や量的緩和や買いオペと何が違うんだろうとモンモンとしていたところ、さきほど既に恒例となったdankogaiさんによる応答を見つけた(もう1週間も前の話のようだが・・)。

ふろむださんのエントリー=『麻生内閣や小沢民主のより、はるかに強力に日本経済を立て直すと思われる政策を、中学生でも分かるように解説してみる - 分裂勘違い君劇場
dankogaiさんの応答=『404 Blog Not Found:貨幣に自由を、by税務署

ふろむださんのエントリーについては、dankogaiさんもそれってただの量的緩和でしょという見方のようなので、とりあえずあれは初心者に量的緩和を説明したものだという理解をすることにしよう。

一方、dakogaiさんの主張はもう少し複雑だ。曰く、金持ちの罪は金を使わないことだと。であればやつらの金から貯蓄的な機能を奪い去れと。方法論としては一旦税金でガバっと徴収してしまい、時限抹消口座に還付せよと。さすればやつらは時限到達前に嫌でもフェラーリを買う(=消費する)だろうと。

この理路自体は理解する。そりゃ貯蓄を奪えば消費性向は上がるだろ。なんだか整然としないのはこの政策案の前後だ。即ち、そもそも何が目的なの?と、それって持続可能なの?である。

  • 何が目的なの?

目的を単純化してしまえば、解決策も単純化するのも当たり前で、極論としての面白みはあるかもしれないが、現実味は消えうせる。

ふろむださんの方は割と具体的で、文中に『円高を解消し、株価を下支え』とある。しかしそれは本当に求められていることなのか。そもそも、GDPが上がればよいのか、日経平均があがればよいのか、低所得者がいなくなればよいのか、円安になって輸出が増えればよいのか、日本企業全体の売上高が増えればよいのか、などに優先順位をつけることが「政治」に期待されるのであって、その議論をすっ飛ばしてはまともな政策が導かれるとはなかなか考えづらい。株価を上げたいなら、日銀は折角印刷したお金で国債なんて買ってないで、株を買うべきだし、円安に誘導したいならドルを買えばよろしい。まあこの辺りを曖昧にしてこその極論芸なのであって、それを批判することは何よりも意味がないわけだが。

面白いのはdankogaiさんで、エントリー内に記述されている問題設定と思しき部分は、『で、今回の一番の問題は、金不足ではなくて、金あまり。それも余っているのは「大域的」に見た場合で、局所的には足りてない。』であるが、『今回』というのが何を指すのかよくわからない。上記したふろむださんの掲げる目的が達成されても世間一般では『ムスムス』程度の反応に過ぎないというDISを展開しているにもかかわらず、である。なんだこれは。コンビ芸か。だとしたら、笑い飯さながらのボケの応酬である。

大体からして、この期に及んで経済システムの不具合を政治でなんとかしようというのが、実に浅はかではあるまいか。この辺の根本的な問題設定は先日hokusyuさん批判に乗じてこっそり書いたので、興味があればご一読いただきたい。
究極の不平等という平等の可能性 - よそ行きの妄想

  • それって持続可能なの?

持続可能性のない急場凌ぎのツケこそが現状なのであって、それを繰り返してはならない。

これについては、ふろむださんの方は、いろいろと反論に備えて準備している形跡があるので、スルー。というか、そもそもこれが量的緩和の説明なのであれば、それは現に行われている政策なのであって、持続可能性についてもある程度検討されていることは当然である。

やはり面白いのはdankogaiさんで、要はマネーの総量を増やすとバブルの芽になるからそれをせずに、金持ちの消費を増やすことで対応しようと言っているように見えるわけだが、貯蓄を消費にまわすと、その分の銀行の信用創造がストップして、マネーサプライが減る。マネーサプライが減ると、金利は上がる。貸し剥がしも増えるだろう。すると企業はBSを圧縮する。商品開発などのための設備投資も削られるから、売上も停滞する。要はデフレだ。確かに金あまりは解消するだろう。しかしそれは同時に信用収縮を意味するのであって、バブル崩壊と同義と言って過言ではない。

さらに、金持ちにまで消費を強要すると、世の中には中流しかいなくなるのではないか。彼らの貪欲なまでの資本拡大に向かう欲望が、消費に転化してしまう可能性だ。どうせ消費にしか使えない金であれば、消費できる量を超えて稼ぐ必要はない。一部の優秀な人間が、消費を好まないからこその資本の拡大なのであって、そうして拡大した資本が直接または間接的に再投資されることで、経済は発展してきた。その流れを人為的に止めるような政策が、持続可能とは思えない。

そしてdankogaiさんの提唱するような政策が打ち出された場合、上述のような事態を避けるかのように、金持ちは自らの資産を金などの比較的流動性の高い商品資産に移すだろう。それが、不確実性に対する備えだからだ。貨幣や金などの流動性の高い資産は、無限の不確実性を対処可能なリスクとして縮減させる。そしてそのリスク分析こそは人類の発展の歴史でもある。今更それに逆行することはできまい。

そもそも、『これを単純な累進課税で是正しようとすると、多分うまく行かない。(中略)そこで、税務署を使ってみる。』というロジックもいまいち釈然としないものがある。いやそれ『多分うまくいかない』のではないの。徴収した税金で商品券を配るような真似をすると、『単純な累進課税』と一体何がそんなに変わるのだろうか。


と、思った。