いや、「パソコン」みたいな「汎用機」が大衆向きであるはずもなく

パソコンってやばそうだよね。 - Chikirinの日記」と「404 Blog Not Found:「パソコンってやばそうだよね」がやばい唯一の理由」について。

大衆はいつだって、単純でわかりやすく、直感的に理解できるインタフェースを望んでいる。その点「パソコン」というのは、実に使いづらい。理由は、何でもできるからだ。

何でもできる「汎用機」というのは、その性質上、数多の機能における最適インタフェースの最大公約数的なインタフェースを採用することになる。NintendoDSにカートリッジを差し込んで電源を入れれば、誰でもゲームを始めることができるが、さあゲームを始めようと思ってパソコンを立ち上げても、パソコン内に無数に存在するフォルダやファイル、インターネットを経由してたどり着けるインターネットサイトまで含めた場合のその膨大な情報量に、デジタル機器に疎い人であればうんざりしてしまうのは目に見えている。


iPodで莫大な金脈を掘り当てたappleは、その成功について(おそらく後付けで)次のように語っている。

ここでも興味深いことに、ジョブズとその側近たちは「汎用コンピュータを使う時代から、コンピュータを応用して特定の目的に使う専用機が主流になっていく」と読み、現在へと続く製品企画の基本的なポリシーになっているという。

本田雅一の「週刊モバイル通信」

iPodは当初、取り外し可能な「パソコン」の一部であって、ちょっと音が鳴る、つまりメディアプレイヤー付きのUSBメモリのような位置づけだったと理解している。その後改良を重ねたiPodは、iPod touchとして、楽曲のダウンロードまで可能な「専用機」*1として完成された。

ここでいえることは、「汎用機」のもとである程度新しい市場が開拓されると、その市場が今度は「専用機」を生み出すということだろう。オンラインゲームにしろ、デジタル楽曲にしろ、もともとはパソコンが開拓した市場だった。ただし、その限りにおいては、本格的な普及とはならない。上述したように、一般大衆にうけないからだ。ある程度先鋭的な層で市場を広げ、いけそうかなと言うタイミングになると使いやすい専用端末が颯爽と登場し、一気に大衆向けに市場を拡大する。逆に言えば、ある程度は「汎用機」のもとで市場が広がらないと、「専用機」を投入してもコストが回収できない。大体こういう流れだろう。

ちなみに、DSやiPodの大ヒットを現実に目の当たりにした私は、次の専用端末はインターネットだろうなと2年ぐらい前から言ってる。ネットブックは微妙に中途半端な気がするが、RSSをうまく使えば、新聞や雑誌並みに受動的な(暇つぶし的な)メディアがつくれる。先日発表された「WILLCOM NS」なんかは、結構アツイと思う。コンテンツが無料なうちは、ビジネスとして何の面白みもないが、今後こうしたインターネットメディアへの需要は間違いなく拡大し、普通に考えて新聞や雑誌と同等かそれ以上にはコンテンツに対しての課金を実現させると見る。


以上は基本的に個人向け市場を意図しての記述だが、法人向けも基本的には同じ流れだろう。即ち、企業ごとに必要となる機能はまったく違うだろうから、それぞれが、自らの用途に即して「パソコン」をカスタマイズするようになるのではないの。

少なくとも、いまどき普通の会社は共有サーバーとかで作業してるのだろうから、何十GとかいうHDDは全然いらないと思う。

当然、一方で冒頭紹介したdankogaiさんのようなプロフェッショナルな人は、HPCとかハイスペックマシーンという「専用機」を求めることになるんだろうと思う。

*1:まあ余計なこともいろいろできるが。