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米経済は更にもう一段の悪化に見舞われる

アメリカで連邦公開市場委員会(FOMC)が開催され、声明が発表された

大方の予想通り「フェデラルファンド(FF)金利誘導目標水準をゼロ─0.25%に据え置」く旨が発表される一方で、「金融市場の機能回復が進んでいることを考慮し、特別流動性措置の大半について、FOMCとFRBは2010年2月1日で終了することを見込」むとされた。特別流動性措置が終了することについては、FRBの米経済に対する俄かに楽観的な姿勢が感じられ、マーケットからは僅かながらではあるがポジティブなサプライズとして迎えられたようだ。

特別流動性措置には、ターム証券貸出制度(TSLF)が含まれる。


さて、米経済の先行きを占うにあたって、注目すべきひとつのポイントは、このTSLFという制度であると私は思う。

TSLFとは、連邦準備制度理事会(FRB)が、証券会社などが保有する証券を担保にして、FBRの持っている財務省証券と交換してあげるというプログラムで、昨年から、担保として従来の政府系機関債、政府系機関発行の住宅ローン担保証券RMBS)などに加え、新たに政府系機関発行の住宅ローン担保証券を裏付けとするモーゲージ担保証書(CMO)のほか、トリプルA格の商用不動産担保証券(CMBS)が受け入れられている。

つい昨年、サブプライム向けの住宅ローンが全体的に回収困難となり、それらを裏づけとした資産担保証券(ABS)などがトリプルAの格付けもむなしく紙くず同然と化した件は記憶に新しいが、要するにTSLFとは、この「紙くず同然のなにか」を担保にFRBがカネを貸してくれるという話に他ならない。

紙くず同然となったABSはいわば不良債権ならぬ不良ABSであるから、本来であればそれらを有する金融機関などは、裏づけとなっている住宅ローンの担保物件や商用不動産などを差し押さえ、処分し、処理を行わねばならない。但し、ABSを保有する金融機関などが一斉に担保物件の処理をはじめると不動産市場が暴落して大変なことになりかねないし、また流動性が枯渇することにより金融機関が連鎖倒産するようなことになると、世の中的にかなり悲惨なことになるため、時限的な応急処置としてTSLFという制度が講じられた。

最も望ましい事態は、当該応急処置を施している最中に混乱が収束すると共に、応急処置的なカンフルの投入がなくとも不良ABSの処理に耐え得るほどに金融機関と実体経済が体力をつけることのはずである。よって、上記の声明の内容通り来年2月なりにTSLFが終了するのであれば、それは大きな意味を持つことになる。FRBによる経済の見通しが良化したことを意味する可能性があるからだ。


しかしながら、自己資本規制の関係上、不良ABSの含み損がどんどん大きくなるような局面では金融機関は新規の貸し出しを行いづらく、実体経済に十分な流動性が供給されるということは考えづらいから、基本的には不良ABSの処理が完了し、経済が一旦底打ちしないことには本当の意味で回復基調に戻ると言うことはないのではないか。

もしそうなら、TSLFは単に不良ABSの最終処理を先送りにするものに他ならない。バブル崩壊によって生じた不良債権の処理を先送りにし続けた結果が日本の「失われた10年」であることはFRBとしてもよくよく研究しているところであろうから、FRBが不良ABSの処理について無意味な先送りをいつまでも続けるということは考えづらいことではある。

こうした前提に基づけば、FRBは必ずしも経済に対して強気にはなれない状況であったとしても、どこかの段階で単に踏ん切りをつけるかたちでTSLF終了及び不良ABSの最終処理に挑む必要性に迫られることは自明であり、早期のTSLF終了が意味するところは、必ずしもポジティブなものには限られないことになる。

現状は、上述したような「ABSを保有する金融機関などが一斉に担保物件の処理をはじめる」ほどに流動性が危機的な状況というわけではないから、「一斉に」ということにはならないだろうが、徐々に進むことは間違いない。それに伴い、米国の地価は一層下落していくことになるだろう。

それはつまり、資産デフレである。日本が最近10年間で経験しているものであり、保有する資産価格が下落することにより、企業や家計に含み損が発生し、投資や消費意欲が抑制されることになる。

冒頭で紹介したFOMCの声明をもとに楽観的な見通しを強める向きもあるようだが、あれだけ大規模に膨れ上がったバブルが崩壊して、そう簡単に底打ちするはずがないのではないかと思う。