親デビュー

タイトルは、ついに人の親になりましたヤッターということではなくて、親になって突然振る舞いが積極的になる現象に名前をつけたものであり、要は高校デビューや大学デビューをもじった造語である。

親になるというのは結構特殊な経験で、それまでの価値観を一変させるだけのインパクトがある。命の連鎖というストーリーは実に壮大だし、なにより赤ん坊というのは手のかかり方が半端じゃなく、生活を変えざるを得ないという事情もある。

こうした外部環境をまるで手玉に取るがごとく、こどもができるや否や子煩悩キャラに徹し、親という職位に光の速さで自己を同一化させる人が、親デビュー組である。

それはまるで、中学のときに冴えなかったのに、高校に入った途端金髪になって、ちょい悪キャラに華麗な転身を遂げる人のようだ。

こどもの口を借りて他人に話しかける、即ち誰がどう考えても親の意思であるのに、いちいち語尾に「〜って(言いなさい)。」をつけ、こどもに対して発話を促す形式をとるタイプや、子持ちが相手だと途端になれなれしくなる(普段は無口)タイプの人は、大抵親デビューとみて間違いない。

高校デビューや大学デビュー同様、誰に迷惑をかけているわけではないので、別に何か問題があるというわけではないが、ちょっと前までの自分はどこ行ってしもうたんや、と周囲の人からこっそり突っ込まれることは避けられない。


ちなみに、私は親になってもう5年にもなるわけだが、未だに親キャラに完全に馴染めず、それはそれで問題のような気もする。