不健全図書を専門に扱う本屋をつくってはどうか

ちょっとしつこい感もあるが、東京都青少年健全育成条例に関連して。

前回までのあらすじ

昨年の12月、東京都議会において東京都の青少年の健全な育成に関する条例、いわゆる東京都青少年健全育成条例の改正案が可決されたが、この改正案が都民の権利を侵害する恐れがあるなどとして方々で反対の声が上がっており、年が明けても議論は尽きない様子だ。

改正案のうち特に問題となっている箇所は、以下の引用部と思われる。

第八条 知事は、次に掲げるものを青少年の健全な育成を阻害するものとして指定することができる。
一 販売され、若しくは頒布され、又は閲覧若しくは観覧に供されている図書類又は映画等で、その内容が、青少年に対し、著しく性的感情を刺激し、甚だしく残虐性を助長し、又は著しく自殺若しくは犯罪を誘発するものとして、東京都規則で定める基準に該当し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあると認められるもの
二 販売され、若しくは頒布され、又は閲覧若しくは観覧に供されている図書類又は映画等で、その内容が、第七条第二号に該当するもののうち、強姦等の著しく社会規範に反する性交又は性交類似行為を、著しく不当に賛美し又は誇張するように、描写し又は表現することにより、青少年の性に関する健全な判断能力の形成を著しく妨げるものとして、東京都規則で定める基準に該当し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあると認められるもの*1

第九条 図書類の販売又は貸付けを業とする者及びその代理人、使用人その他の従業者並びに営業に関して図書類を頒布する者及びその代理人、使用人その他の従業者(以下「図書類販売業者等」という。)は、前条第一項第一号又は第二号の規定により知事が指定した図書類(以下「指定図書類」という。)を青少年に販売し、頒布し、又は貸し付けてはならない。*2

普通に考えれば、青少年の健全な成長を阻害するようなものを青少年に売らないというのは極めて当然のことであるし、規制の対象は本屋などであって表現者でないのだから表現者は臆することなく今まで通り表現を続ければいいように思えるし、そもそも従来から青少年の性的感情を刺激するタイプのものは規制の対象であったところに、追加で犯罪行為を賛美するタイプのものが加わった程度のマイナー改正であるのだから、私としては別に大した問題ではないと考えていたし、当ブログでもそうした意見を表明してきた。

ところが、そうした意見を表明するたびに、それに強く反発する数多の意見が寄せられてきたこともまた事実である。

曰く、何が不健全であるかについて完全に明確な基準が設けられない限り、不健全を指定する審議会の独断と偏見のもと、ありとあらゆる表現が不健全の指定を受ける可能性があることを否定することはできないと。

そして、ひとたび不健全の指定を受ければ、その創作物は通常の流通から外れた扱いを受ける可能性が高く、結果として商業的に大きな打撃を受ける恐れがないわけではないから、保守的な出版社としては表現者に対して表現の自粛を促すかもしれないし、そもそも臆病な表現者であれば、不健全の謗りを免れるべく、表現に際して萎縮してしまう可能性がある。

実際に、自らの作品が不健全の指定を受けるのではないかと恐々としている表現者は少なくなく、表現規制の被害は既に生じているのだと言う。

これは由々しき問題である。

それが杞憂によるもであろうが何だろうが、結果として表現者が萎縮し、表現を止めてしまえば、我々消費者は作品を消費することはできないのだ。三度の飯より大好きな陵辱系の同人誌が思う存分読めなくなってしまうかもしれない。

必要なのは流通の確保

こうした厳しい現実を前に、我々に出来ることは何だろうか。

規制に反対する政治運動を興すことも当然有力な選択肢だろうが、上述した表現者が萎縮するまでのプロセスに鑑みれば、問題の一端が流通にあることもまた明らかである。

不健全図書を公に扱う流通業者が乏しいからこそ、表現者は不健全指定を恐れるのであって、不健全図書に指定されたところでその後の流通が確保されてさえいれば、何も恐れることはないのだ。

例えばamazonは、18禁などの成人指定図書については注意書きを添えたうえで普通に扱っているのに係わらず、何故か東京都に不健全指定された図書類については一切取り扱っていない。こういう歪な運用こそが表現者に余計な心労を与えていることは明らかではないだろうか。


以下は、東京都が公表している不健全指定図書一覧に掲載されていた、平成22年度において東京都から不健全指定を受けた本のリンク集である。上述の通り、不健全指定図書はamazonでの取り扱いがないので、わざわざセブンネットショッピングアフィリエイトに登録して、作成した。

この仮設不健全本屋が一定の成果を挙げることがあれば、こうした本屋にも一定の需要があると判断されるわけで、不健全な図書を専門に扱う流通実現への弾みとなるだろう。この試みは、不健全図書愛好家の夢でもある。

愛好家の諸君は、この機会に是非とも奮って不健全な図書を買い漁って欲しい。

なお、青少年のみんなは不健全図書の購入はもとより、これより先の閲覧は自粛していただくよう、お願い申し上げる。

所感

不健全過ぎ(笑)

*1:太字が今回修正箇所

*2:太字が今回修正箇所