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ソーシャルゲーム規制の方向性について 〜金商法あるあるを交えながら〜

もともと騒がしかったソーシャルゲーム界隈だが、先日グリーの人気ゲーム「ドリランド」内で利用されるカードが不正に複製される事件が発覚したことを機に更なる盛り上がりを見せ、部外者と門外漢を中心に無責任で面白半分の盛大な規制コールが巻き起こっているようなので、今日はこの問題について考えてみたい。

なお、過去にも当ブログのエントリーを読んでいただいたことのある読者の方々には今更言うことでもないかもしれないが、かくいう私こそが部外者かつ門外漢の最たるモノであり、これから書くことこそがまさに面白半分の野次に他ならないわけであるから、タイトルに釣られて真面目なエントリーと思って読みに来てしまった方は、そっとブラウザを閉じることをお勧めしたい。

「ドリランド」カード複製事件

さて。まずは、ドリランドカード複製事件を簡単に振り返っておこう。

ドリランドというのは、ダンジョンでモンスターを退治して宝物をゲットしようという、まあよくあるタイプの、いわゆるロールプレイングゲームだ。プレイヤーは、ハンターと呼ばれる存在を操ってモンスターと戦うことになるが、そのためにはハンターを表象したハンターカードと呼ばれるカード持っている必要がある。ハンターカードはいかにして入手が可能かと言うと、主にガチャと呼ばれる仕組みによる。ガチャをすると、ランダムで何らかのハンターカードを得ることができる。ガチャは、ドリランドのプレイヤーであれば誰でも、1日1回無料で引くことができるが、当然いいカードはなかなか出ない。たくさんガチャを回したければ、追加的な課金に応じる必要がある、と大体こういうことらしい。

で、今回起こったことは、このハンターカードを複製できる裏技みたいなものが見つかってしまったということであり、その結果、とりわけレア度の高いカードが大量に複製された挙句、ヤフーオークションなどを経由して流通したとのことである。その取引総額はなんと4億円を超えるというから、驚かないほうがおかしい。ジャスダックあたりのクソ株を遥かに凌ぐ流動性だ。

ゲーム内のアイテムを換金することについては、運営側のスタンスとして基本的に禁止しているものの、ヤフーオークションなどの外部のサイトでやられる分については事実上黙認してきたような部分があった。そうした中で上述したような事件が起こると、「事実上換金できるんじゃん」という共通理解が広がることとなり、結果として「ちょっと問題があるんじゃないの」という話になるのは比較的自然なところだとは思う。

ソーシャルゲーム≒パチンコ?

で、このヤフーオークションなどを活用した換金の仕組み、これがパチンコ業界におけるいわゆる三店方式に酷似していると、そもそもガチャの確率を操作して射幸心を煽るみたいな仕組みはもうパチンコそのものだと、そういう理屈で、このソーシャルゲームというものは要するにパチンコと同じなのであって、そういう前提で規制をするべきなのだと、このような議論がネットでは非常に多くなっている。終いには、ソーシャルゲームの価値をパチンコ産業を参考に試算して、グリーやDeNAの目標株価を引き下げるという新米モデラーのやっつけバリュエーションみたいなものが三菱モルスタ証券から公表され、事態はお笑いの極みとなった。

三菱UFJモルガン、ソーシャルゲームの市場規模予測を上方修正…ただし比較対象をパチンコとし目標株価やレーティング引き下げ | Social Game Info

果たしてソーシャルゲームはパチンコなのかという話であるが、私は、このことについては若干の異議を唱えたいと思っている。

三店方式に似ていると言うが、三店方式というのはむしろ、パチンコを賭博法上限りなくブラックに近い存在から、一応体面上だけでもグレーたらしめるための仕組みなのであって、それは三店方式自体が白だからこそなせる技である。三店方式的な仕組みでアイテムの換金も可能であるという事実を持って、ソーシャルゲームも賭博の一種だと断定するのは、坊主憎けりゃ袈裟まで憎すぎて、ストールを含めた袈裟っぽいファッションの人を端から虐殺していくような暴論であり、八つ当たりも甚だしいのではないか。

また、射幸心を煽るなというのも抽象的すぎて意味不明であり、世の中に数多ある射幸心ビジネスを捨ておいてソーシャルゲームだけを規制せねばならない理由はイマイチ見えてこない。もし射幸心ビジネスを一切世の中から排除すべしということであれば、まっさきに撲滅されるべきは占いや宗教の類ではないだろうか。大体、庶民から幸せを祈る気持ちを奪っていいのか。

金商法の適用

もしかすると、ソーシャルゲーム規制派の人たち(もしそんなのがいれば、だが)は、ここまでのエントリーを読んで頭に血を上らせているかもしれないが、私は断じてソーシャルゲームを擁護したいわけではない。ただ、規制するにしても筋道というものが必要だろうという話をしている。各方面における規制の筋道というものを損ねない限度において、件のソーシャルゲーム業界をギチギチに締め上げるためには、金商法(金融商品取引法)の適用が望ましいのではないか。私はこのように申し上げたいのである。

金融庁による、金商業者(いわゆる証券会社など)に対する取り締まりというのは、年々激化の一途を辿っており、現状において筆舌に尽くし難い水準に至っている。

そう。我々金商業者に言わせれば、賭博法や景品表示法など稚技に等しいと言っても過言ではない。金融庁には、是非とも我々金商業者の恐怖と不安を、ノウノウとネットサービスなど開発しているエンジニアどもにも味あわせてやって欲しい。

金融庁さん、これは管轄を一気に広げるチャンスでもあるんですよ。

実際、例えばドリランドを金融庁管轄にするのはさほど難しいことではなく、要はドリランドのハンターカードを有価証券とみなせばよい。実際問題、有価証券と言えば有価証券だろう。実物券面こそないが、そんなものは株券も一緒である。広義の有価証券とはつまり、何らかの財産やそれを得るための権利を表彰する証券を指すわけだが、ドリランドのハンターカードも、ハンターを操りモンスターを討伐し戦果としての宝物(及びその換金によって得られる金銭)を得ることができる権利を立派に表象しているではないか。

もしドリランドのカードが有価証券であるということになったら、当然それをヤフオクなどで取引することはままならず、金商法の認可を受けた金融商品取引所での売買に限られることになる。

その折には、是非DeNAは当該認可を取得し、忘れられた主力事業である「モバオク」を金融商品取引所に衣替えしたうえで、セントレックス、アンビシャス、キューボードに新たに東京金融取引所を加えた余分取引所四天王あたりと共に、レアカード上場争奪戦を繰り広げるカオスを演じて欲しい。

よろしくお願いします。

金商法あるある

ということで金商法である。

そのレギュレーションは微に入り細に至るが、投資者保護に関する原則自体は極めてシンプルだ。

ひとつは誠実・公正の原則。

そして自己責任原則。

最後に適合性原則である。

これらの素晴らしい原則がいかに厳格に運用されているか。まずは自己責任原則の前提たる説明義務について見てみよう。

金商業者は、有価証券等を顧客に販売しようとするとき、その有価証券に投資する際のリスクを事細かに書き連ね、それらリスクの内容に関する膨大なデータを記した大体100ページくらいある「目論見書」と呼ばれる書面を交付する義務を負う。ただそんな分厚い冊子、渡しただけでは読まないかもしれないということで、リスクだけを簡潔に記した概要書みたいなものも合わせて交付する。しかしながら、そこまでしてもなお、書類と言うのはなかなか読まれないものだということで、これらの書類については要点を読み上げ、必要に応じて咀嚼して説明することで、理解させるよう努めなくてはならない。

こうした説明義務が自己責任原則の前提だということは、ここまで入念に説明しない限りは、投資の失敗は顧客の責任ではないということだ。

これは理屈上そうなるとか、そういう生ぬるい話ではなくて、現に説明義務違反を理由に顧客に対する損害賠償を命ぜられ煮え湯を飲まされる同業者は相次いでおり、消費者金融に対する過払金返還請求を生業とする「正義の味方」の振りをしたチンピラ弁護士・司法書士の次なるターゲットの最有力候補として、この説明義務違反の損害賠償が上がっているくらいなのである。

ドリランドのカードは、極めて高リスクな有価証券であり、そのリスクとしてはざっと考えただけでも次のようなものがあるだろう。

まず、グリーが潰れたら紙屑すら残らない。グリーがドリランドの運営を放棄しても同様である。また、そもそもヤフオクなどで実際は取引がなされているとはいえ、取引の適法性に疑義があるわけだから流動性リスクも極めて高い。そして流動性が失われてしまうと、他のプレイヤーに自慢するくらいしか使い道がなくなってしまうから、みんながドリランドに飽きてしまった場合はもうどうしようもない。アカウントを持っていることすら恥ずかしくなってコッソリ削除するくらいのところまで、目に見えてる。

グリーには、ユーザーがドリランドをプレイ開始した時には上述のようなリスクをしっかりと開示すると共に、グリーの財務状態やドリランドのプレーヤー数推移、課金の実態などを克明に綴った書面を郵送し、更にはユーザーが有料ガチャに手を出そうものならすかさず電話して「全然いいカードは当たらないですけど本当にいいんですか」と小一時間問い詰めるくらいの姿勢が求められる。

もし本当にこんなことになったら、グリーの運営は悲鳴を上げるだろう。

しかし、実はこんなのまだ全然序の口に過ぎない。そうは言っても説明すりゃあいいのだから。

げに恐ろしきは適合性原則なのである。

昨年2月、国内で営業する金商業者の6割が座っていた椅子から転げ落ち、うち1割はそのまま亡くなったとも言われている伝説的な 判例が生まれた。

その事件は、SBI証券が顧客に対して信用取引における決済不足資金の支払いを求めたことからはじまった。SBI証券というのはいわゆるネット証券だから、顧客はきっと、誰に頼まれるわけでもなく勝手にネット経由で口座を開き、勧められることもなく信用取引を始めたに違いない。ところが、不幸なことに大きな損を出してしまった。信用取引では顧客が預託した証拠金を上回って損が出ることがある。だから、その不足分をSBIとしては払ってほしいと、こう主張したわけだ。なんとまっとうな主張だろうか。

ところが、SBIによるこのまっとうな主張に下された裁判所の判決は、実に意外なものだったのだ。

棄却したのである。

裁判所は、その顧客には信用取引をする「適合性」がないというのだ。その顧客は72歳の農業従事者だったそうだが、そういう人は証券取引に慣れてるはずがないんだから、申込みがあった段階で訪問するなり電話するなりしてリスクを説明し、それこそ取引をやめるように勧告すべきだったと。それをしなかったのだから、証拠金を超えた損失はSBI証券さんが負担しなさいと。こういうことのようなのだ。

顧客が勝手に申し込んできて、勝手に取引して、勝手に損したのに、なぜか損失を被らなければならないSBI証券

この恐怖、痴漢冤罪に匹敵すると断言できる。

グリーも、高まる規制プレッシャーに耐えかねてか、15歳以下のユーザーに対する課金を月5,000円までに制限するという一応の具体策を出してきたらしいが、金融庁さんに言わせれば「何をかったるいことを言っているのか」という感じに違いない。

例え15歳を超えていてもリスクの内容を全く理解できないアホというのはいて、そういうアホたちは万難を排しても保護しなくてはならないのだから、事業者は全てのユーザーの属性情報を細かくチェックすることで、ユーザーがアホではないことを確かめなくてはならない。当然だそんなこと。

手間がかかるから年齢などの比較的取得しやすい情報で一律に線引きする他ない?

甘ったれたことを抜かすな!

アホか!

こんぷらくんオチ

ところで、ハンターカードがいわゆる有価証券と異なっている点を敢えて上げるとすれば、それはコレクター心をくすぐることだろう。

この点、あまりコレクター心をくすぐり過ぎると、やはりアホが被害を受けることになりかねないわけであるから、ここでも対策は必要となる。

これについては、すべてのカードの絵柄について、東証の冊子に描かれている妙にアゴの長い"ゆるふわ"マスコット、「こんぷらくん」をベースとすることを義務付けることで、対処可能であると思料する。