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ソーシャルゲームに返還請求ってさすがにそれはないでしょ

雑談

なにかその、ソーシャルゲームの「被害者」なる方々が、ソーシャルゲーム事業者各社に対して返還請求訴訟を起こすとか何とかという話が聞こえてきて、いくら何でもさすがにそれはないのではないかと思ったので。

話の出所はこのあたりではないかと推察。有名なやまもといちろうブログですね。

これは消費者庁や警察庁関係なく、そもそも懸賞、絵合わせで違法だったコンプリートガチャは、利用者から、使用金額の変換訴訟を起こされる可能性があります。
戸田泉せんせとか腕まくりしてたら笑いますが。
ただ、ざざっと試算しますと、総額で1,200億円以上、返還対象となるんじゃないかと思うので、絶対に取り返したいと思う方は携帯電話の支払い明細を握り締めて、事実上の違法認定となる改善通知が業界団体に送達された報道があり次第、その方面に詳しい弁護士方面に雪崩れ込んで相談していただければと思います。

ソーシャルゲームへの「コンプガチャ」規制関連のメモ: やまもといちろうBLOG(ブログ)

まあ、同ブログの後の記事なども合わせて読むと、要するにそんな動きがあるという噂を聞いたよという話に過ぎず、さらには先般のコンプガチャ規制とは独立した動きだと言うから、微妙に何のことかよくわからないというか、そんなことがあったら面白いねというネタと言う感じもするところではあるものの、一方で、なんとなく1,200億円という数字が一人歩きして、例によって例のごとく2ちゃんねるあたりではソーシャルゲーム憎しとの狼煙が上がっており、実際に株価がストップ安売り気配になっているのを見て、何と言うか、さすがに気の毒だと思ったわけだ。いや誰がというわけでもないのだけど。


で、いい大人が通常のガチャで使いすぎただけというのはもちろん論外で、未成年のウッカリ課金については裁判外で事業者が返金に応じているらしいので別枠として、あるとすればコンプガチャ違法判断に基づく不当利得返還請求だと思うものの、絵合せ懸賞の部分のみが黒で、その前段階としてのガチャ販売の部分が白な現状では、不当利得といっても大した額にならないか、ほとんどゼロというのが穏当な判断ではなかろうか、という話。

そう。確かに民法は不当利得の返還請求権を認めている(703条)。Wikipediaなんかにもある通り、後で契約が無効になった場合や法律上の根拠がないことが明らかになった場合などに、当該契約に基づいて発生した相手方の利益を取り戻せるという権利である。

このように聞くと、ならばコンプガチャの売上は、まさしくソーシャルゲーム事業者の不当利益であると思うのかもしれないけれど、コンプガチャが違法であるというその意味合いというのは、詳しくは昨日書いたエントリーを見ていただきたいと思うが、要するにガチャをやってカードを引き、特定のカードをコンプリートするとレアカードが貰えるよという仕組みの後半部分のみなのであって、前半のガチャでカードを買う部分は特に違法ではない。

文房具屋さんで鉛筆を12本、600円で買いました。例えばね。それで鉛筆にはそれぞれ異なるシールが付いてて、シールの絵柄が数種類揃うと消しゴムが貰えますと。ここで言う消しゴムの提供方法は絵合せ懸賞であり、違法だ。この懸賞は行われるべきではない。しかしながら、鉛筆の販売自体は、普通に合法なのである。

だから、懸賞が違法というだけでいきなり600円全額が返ってくるというのはどう考えてもおかしい。600円は、不当な利得でも何でもない。鉛筆の販売代金なのであって、支払われて然るべきものなのである。

もし鉛筆を使っていなければ、鉛筆を返品することで、取引自体を白紙に戻す(つまり、お互いに不当利得を返還する)という選択肢はあり得る。ソーシャルゲームにおいても、レアカード景品がないのならそもそもガチャをしなかったという理屈で、取引を白紙に戻せるのだろうか。もしそれが通るなら、「ハイハイ返しますよ喜んで」と返還に応じる消費者も多そうだが、それはそれで消費者に有利過ぎると感じないか。

鉛筆は消費しなければ商品が損耗しないが、ソーシャルゲームのカードは消費しても損耗しない。逆に言えば、損耗させずに消費することができる。消費したのであれば対価を払うべきだが、商品の損耗の度合いで消費の形跡を図ることができないのである。このあたりがややこしい部分だ。

カードの消費によってどのような便益が得られるのかいまいち定かではないものの、何のカードが当たるかわからないよということを承知の上でガチャを引いて、出てきたカードが自分のコレクションの一部となった時点、要するに事業者がデータベースに顧客のカード所有情報を登録した時点で、ある程度ユーザーによる消費行動は完了していると考えるのが自然ではないのだろうか。

そうであれば、返還は得られないということになる。ゼロ。今後コンプガチャのような懸賞は慎むようにという話には当然なろうが、過去のコンプガチャに係る売上の返還はなされない。理由は、事業者側が売上に対応する役務の提供を既に完了しているから。

逆に返還が多少なりとも認められる場合というのは、ユーザーの消費行動は、カードの購入時点では完了していないということが認められるときだろう。例えば、一律1年間で均等に消費することにするなどの対応があり得るが、その場合は事業者側の売上計上基準をも変える大々的な話になるだろう。ややこしい。実にややこしい話だ。


ということなので、コンプガチャ売上1,200億円というものが返還の対象になるというのが最悪のシナリオだとすると、私は、会社にとってもう少しという大分ポジティブな決着になるのではないかなという気はする。

とはいえ、たかだかあれだけの報道でこれだけ大騒ぎが起こるという現状の背景には、少なからず世論が、社会がソーシャルゲームに違和感を感じている部分はあるはずで、額面通りに決着するかというと、正直不明なところはある。

個人的には、ソーシャルゲーム各社ともに、国内で売り上げるだけ売り上げて投資は海外という図式の割に、海外投資の成果がなかなか見えてこないところに、マクロ的に見たときの存在意義の微妙さ、ある種のODAなのではないかという嫌疑というものがあるような気がするので、海外でしっかりと成功し出すと世論の傾きというものも少し変わってくるのではないかなという気はする。