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孫正義のゴネ得が禿し過ぎて往年の大スターが太陽光発電事業に大集合の巻

まあ、何ということでもないのだけど、やらなくてはいけないのにやっていないようなことがあると、どうにも喉に小骨が刺さっているような感じがしてブログを書こうにもなかなか捗らないというか、暇な日に冷蔵庫ばっかり開けちゃうような感じで何故かやたらとツイッターを開いてしまうものだから、要するにそれで時間がなくなるわけなのだけど、本邦エネルギー政策をめぐる状況から俄に面白い感じの薫りが放たれているので、今日は少しその件を書いておきたいと思ったわけなのである。

再生可能エネルギー全量買取制度

さて。

我が国では、福島の原発事故以降、神の啓示でも受けたのか、突如としてエネルギー問題の専門家として生まれ変わる門外漢が大量発生すると、それによってエネルギー問題に関する議論は際限なく拡散。事故から1年が経過した今もなお、収束の糸口すら見えないでいる。

まさに「船頭多くして船山に登る」を地で行っているわけだが、ことここに至っては、その船がまた随分と高い山に挑み、さらには登頂しかかっているというのだから驚く他ない。門外漢侮りがたしである。

そう。ご存知の通り、いま、太陽光発電による電力の買取価格が、42円ということで決定されようとしているのだ。船が山に登った結果としては、異例と言っていいほどに立派なものなのではなかろうか。

当該買取りの根拠は、昨年8月に成立し、来年7月を期日として施行される見込みである「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」だ。

同法は、専門家を自称する門外漢の筆頭でありながら、震災当時に首相を勤めた政治家でもあり、現在は反原発運動に精を出すプロ市民風の隠居生活を送っている菅直人が、大災害で気分が高揚したのか、どさくさに紛れて無理やり成立させた法案だった。

そんな法案、どうせ有耶無耶になって終わりじゃないのと私あたりは油断していたのだが、その後

「日本には自然エネルギーが必要ぜよ」

と、アツい理念に燃えた孫正義がどこからともなくやってくると、話が妙に具体的に転がりだし、あれよあれよという間にじゃあ42円にしようかという話になっているようなのだ。

孫正義、相変わらずデキる男である。

で、この42円という買取価格。これがいま、ちょっと高すぎるのではないかということで話題を呼んでいるわけだ。

以下の記事なんかには、それはもう高いと、とにかく高すぎると、そのような趣旨のことが割と克明に書き綴られているので、是非ご参照いただきたい。

蹴茶: 孫さんが触れたくない事実 2009年のFITを引用する理由 [2012.4.26]

曰く、孫正義は2009年以降に起きたソーラーモジュールの価格下落(太陽光発電の原価低減)を誤魔化すため、2009年以前のヨーロッパ各国における太陽光発電買取に関するデータを援用することで、日本での買取価格42円を正当化しようと、議員相手に熱弁してまわっているのだそうだ。これはつまり、最新の設備を用いて発電した電力を、3年前の水準で売り捌くということだから、要すれば技術進歩によって生じた異時点間の価格差でアービトラージができるということであり、賭けとしてはかなり固い賭けであると言えるだろう。

仮にそうだとすると、これはもう要するにただの補助金泥棒だったのではないかという気もしてくるわけで、ウソも方便とは言うものの目的自体ウソ臭過ぎて、ウソも方便と言うよりむしろ方便もウソ、よってウソはウソ、結論として全部ウソといったような三段論法を展開せざるを得ないわけである。

42円は高いのか

孫正義は補助金泥棒なのか。

これは、42円という価格がぼったくりかどうかにかかっているということになる。

まあ、うえで紹介した記事に、結構理路整然と「高い」と書いてあるのでそれを信用してもいいのだけど、なにぶん専門知識がないからよくわからない。よくわからないけどDISりたい。

ということで、長い前置きとなったが、買取価格42円が高すぎるということを少し別の角度から検証してみようというのが、本日のテーマだ。

そして、ここで言う別角度とは、今般の再生可能エネルギー全量買取制度の開始を受けて、続々と太陽光発電事業に新規参入している事業者のメンツのことである。

これがなかなか個性的で面白いのだ。

順に見て行こう。

■DMM

まずはあのDMMである。エロビデオを核に徐々に事業を拡大し、最初はオンラインビデオレンタルなど、まあ言ってもエロビデオの周辺産業に落ち着いてたものの、最近ではFXを筆頭に、何というか庶民のエロ心とか射幸心とか、そういう感じの需要を取り込む事業へ着々と歩を進めているようだ。

もうすでに子会社としてDMMエナジーというのがあって、個人宅向けにソーラーパネルを販売しているそうで、そんなにDMMというブランドを前面に出して何か良いことがあるのかなという気もするのだけれど、新聞にどーんと広告を出していたりもする。

見ると、初期投資を限りなく抑え、レベニューシェア的な方式で個人宅に対してソーラーパネルを売るというのがミソのようだ。ただこれ、何となくローン的に個人の与信リスクを取っている風に見せて、実はただ場所を借りて発電しているだけなのであるから、場所の精査だけきちっとすればリターンの割にはリスクの少ないビジネスには見える。まあカネがあるからこういうビジネスができるのだと言ってしまえばそれだけのことなのだけど、なかなか抜け目ないビジネスをつくりこんでくる。侮れない会社である。

■マーチャントバンカーズ

唐突に「マーチャントバンカーの○○です」と名乗られたら、うっかりイギリスの金融マンか何かかと思ってしまいそうだが、要するに元アセット・インベスターズなのである。

アセット・インベスターズと言えば、長銀OBと反社会的勢力の奇跡のコラボレーション、バブル崩壊が生み出した金融・不動産界の芸術、アセット・マネージャーズの元子会社である。カテゴリーとしてはイーバンクと一緒。懐かしいな、イーバンク

業績や事業の状況は比較的まともであり、前期・前々期と6億くらいの利益を計上している。まあその前はガツンと100億円くらい損を出しているし、今期も4億円くらいの赤字のようなので、通算すると果たしてどうなのというのはあるが。何れにせよ、以下に紹介するような新規参入組よりは幾分経営に余裕があるが故だろうか、いちはやくテスト的な発電所をオープンさせたようなことがリリースされていた。

いやしかし、この会社が発電した電力を買い取るために我々の電気代が上がるのだと思うと実に胸が熱いではないか。

多摩川ホールディングス

いわゆるジェイ・ブリッジ銘柄。

「最後のハイエナ」ことジェイ・ブリッジは、経営難に陥った会社の支配権を二束三文で獲得すると、逆にその会社の自己資本の部から資金を限界まで引き出し続け、終に資源が枯渇すると次のターゲットに移るという実に伝統的な焼き畑農業で市場を席巻した。高田屋を展開するタスコシステムズなど、世にジェイ・ブリッジ銘柄は意外と多いが、多摩川ホールディングスはそのうちの1社に他ならない。

今も同社の大株主の一角に燦然と輝く枡沢徹氏は、ジェイ・ブリッジ出身者であり、オリンパスによる不正に高額な買収資金が世界一周して再びオリンパスに還流するに際して、名誉ある土管の一部を担ったとも言われる、裏社会の雛壇芸人的ポジション(中堅)の人物である。

同社は、売上高こそ一応20億円以上と、そこそこの水準を維持しているが、損益ベースでは一貫して2億から5億の赤字であり、事業に根本的な問題がある節が窺える。

この会社の事業とは何かと言えば、携帯電話の基地局用のアンテナ等部品の製造。

うん。まあ、昔はそこそこ景気がよかった予感はするが、確かに現状では右肩上がりの成長というのは難しそうだ。

そこで「太陽光エネルギー事業準備室」を新設である。何なんだ「太陽光エネルギー事業」。暇な日につい開けちゃう冷蔵庫か。

クレアホールディングス

クレアホールディングスと聞いてもピンとこないは多いかもしれないが、千年の杜と言えばわかるだろうか。または東邦グローバルとか。もしくはキーイングホームとも言う。社名変え過ぎである。

同社は、久馬元防衛相と共に、ロシアはソチでの五輪開催に合わせ、彼の地に人工島を建設するという壮大なプランをぶち上げ、当時10円くらいだった株価を500円くらいまで吊り上げると、キチガイみたいな量の新株予約権を発行し個人投資家を恐怖のズンドコにたたきおとしたという伝説を持つ。

現在は、ロシア人工島事業からは撤退。市場から調達した莫大なカネからすると随分慎ましくなった資産規模で、水道工事を主戦場に年間3億円という、これまた上場会社としては慎ましい売上を計上している。連結対象の会社数はホールディングスを入れて7社だが、連結従業員数は18名である。1社あたり3名弱。素晴らしい。

太陽光関連事業への参入を企図し、韓国メーカーとOEM契約を締結だそうだ。

そんな装備で本当に大丈夫か。

■インスパイアー

もともとはイスラエル産のセキュリティソフトを輸入販売するという業態で、まあ今思えば持続的な成長は難しいのではないのと思うのだけど、当時は何となくナウい感じだったのだろう。2001年に何かの間違いで今は亡きヘラクレスにグロース基準で上場している。しかしながらといったものか、案の定といったものか悩むところだが、上場した途端に力尽き、売上高は年々減少、直近では1.2億円を割り込むこととなっている。営業損益はなんと2003年以来10年連続で赤字。赤字に次ぐ赤字。真っ赤。5億、4億、3億とまあ面白いくらいに資金が蒸発していくのである。

すると当然のごとく債務超過に陥るわけで、現状は債務免除にデットエクイティスワップ、大規模な第三者割当による新株予約権発行と、まさに集中治療室状態。

本年2月にウエストホールディングスと提携して太陽光発電システムの販売事業に参入とのことだが、「おじいちゃん、点滴外して大丈夫なの」という不安は拭えない。従業員9名しかいないし。

誰がための買取りか

ことほどかように太陽光発電関連事業には、かなり個性的な面々が次々と新規参入を決めており、その様はまるで、暇を持て余した田舎のヤンキーOBたちが、深夜、明かりを求めてコンビニに大集合するが如しである。

とはいえ、私に上記で示したような面々を批判する意図はない。

当然だ。

企業として存続している限り、資本コストを僅かでも上回るような投資機会があるのであれば、積極的に投資を検討していくことが経営者の義務というものである。

だからこれは偏に、孫正義の決死の努力によって確保された42円という単位当たりの買取価格が、素人目にも魅力的な水準だったという厳然たる事実が招いた合理的な結果なのである。

やはり買取価格42円は、十分に高かったのだ。

買取価格が十分に高ければ、それはそうなるはずである。

なにせ、十分に利益が確保できそうな水準で端から売上が決まっているのだから。国債を購入して満期まで保有する投資戦略と同じ。即ち、ノーリスクである。

しかも、やることと言えば、多少語弊はあろうが極端な言い方をすれば、中国産のパネルを輸入して空地に並べるだけだ。むしろ、上記各社にとどまらず、主たる製品の汎用化や過剰な競争などで利益の源泉を失った赤字企業各社は、例外なく発電事業への参入を検討されたほうがいいのではないかとさえ思うし、きっとそうなるだろう。


しかしそれにしてもこの状況である。

これから起こることを俯瞰すれば、要するに電力の最終消費者たる我々一般市民から、それこそ上述したような太陽光発電事業者各社への所得移転に他ならないのであって、どうしてそんなことをしなくてはならないのという思いは、拭い去れない。

まして、発電用の太陽光パネル自体はほとんど中国製だから、国内では雇用もロクに生まれないわけで、一体誰がための補助金なのかという疑念もよぎるわけである。


もし、あなたが戸建住宅にお住まいであれば、屋根にパネルを設置することで、晴れて搾取する側に廻れることとなる可能性もあるわけだけれど、マンション住まいの方はそれもなかなか難しい。「これはもうあまりにもバカバカしい」ということで、いっそ海外に引っ越すという選択もあながち荒唐無稽というわけではなくなってくるのかもしれない。

何だろうか。意に反して真面目な話みたいになってしまったのだが、我が家はと言えば、まあ比較的日当り良好な戸建住宅なわけなのであって、結論としては、孫さん、応援してます(笑)