はてなーにもわかる金融業界の栄枯盛衰※追記あり
なんかリーマンが本当につぶれるとか、メリルがバンカメに買収されるとか、
米リーマンHD、連邦破産法第11条の適用を申請
米バンカメがメリル買収を発表、500億ドル相当の株式交換で
なかなか盛り上がってきてるから、折角だからはてなのアホどもにもわかるように今の金融業界についてあれこれ書いておく。
要すれば、ソロスがいうように、『経済活動においては小さなバブルの形成と破綻は普通に繰り返されるが、今回の破綻は、戦後60年間膨れ上がって来た、「スーパーバブル」と呼ぶべき信用拡大の終焉を意味する』、ということであるが。
とりあえずニクソンショックまでさかのぼる。ご存知の通り、ここでブレトン・ウッズ体制が終わって、貨幣は金の兌換紙幣でなく、国家の信用となる。金本位体制が終わり、当時(そして現在までの)最強国家であった米国の貨幣であるドルを中心としたドル本位制が敷かれたわけである。
このことが意味したのは、貨幣がただの信用になって、かつ商品になったということである。さまざまな国家の信用がドルを基準に計られ、値付けされ、取引された。これをもって世の中のあらゆる信頼や価値は商品化されつくしたわけである。これを契機に人類の発展というのはほぼ直接的に、信用を拡大させ、貨幣流通量を拡大させることと等しいことになった。
信用の拡大と、リスク評価のテクニカルな側面を一手に担ったのが金融業界だった。あらゆるマーケットを創造することで、流動性という新しい価値をすべてのものに付加し、わけのわからない金融工学的手法でわけのわからないリスクをわけのわからないなりに定量化して、マーケットに引き入れるということをしてきた。
その過程のなかで、いくつかの「担ぎ上げられた信用」が失墜した。不動産バブルだったときもあったし、ITバブルのときもあった。この場合、失われた信用を政府が一時的に補填するとともに、マーケットは新しい「祭りの神輿」を見つけ、再び終わりのない信用創造に戻っていったわけである。【追記:政府が信用を供給し続け、そしてそのことが新たな信用(=投資先=需要)を生むという循環が機能していた。】
そして今回のサブプライムローンの証券化にまつわる騒動は、この流れを如実に象徴するもので、本来何の価値もない低所得者の住宅ローン*1を証券化して、信用を捏造し*2、マーケットをこしらえて流動性を付加することで、ほぼまったくなにもなかったところから数百兆レベルの信用が創造されてしまった。しかも、今回たまたま破綻したのが米住宅価格だったというだけで、同じ手法による信用創造はそれこそLBOのローンもそうだし、世界中でおこなわれていた。
これは明らかにやりすぎで、このスーパーバブルが崩壊するということは、たとえ政府の介入でもちょっとやそっとで支えられるレベルではないということと、さらには新しい神輿を担ぐのはもうやめようかという風潮を呼んでいる。というか、あまりにやりすぎたために、詐欺の手口が公になってしまいしばらくできないね、という状況に近い。
これはどう考えてもおおごとである。ニクソンショック以降の世界の成長を担ってきたしくみがまったく機能しなくなったわけだ。いま次々と破綻していく米金融機関でおこっているのは、捏造した価値がまったく魅力のないものになってしまったため、プライシングもつかなければ、流動性もなくなってしまうという状況で、資金繰りがまったくできなくなっているわけである。この話の本丸は当然GS・モルガン*3だが、その真似事をしてたチンピラどもがバタバタ死んでいるという状況だ。たぶんことはCITIグループ解体くらいまで突っ込むと思う。
うちのブログにも金融業会が糞*4だから世の中が変わらないという、クソニヒリストがやっていらっしゃるわけだが、そろそろみなさんお待ちかねの金融業会存亡の危機というやつがくる。みなさんがどういう対応をとられるか、実に興味深い。いまだに対岸の火事だと思っている人は、ちょっと著しくセンスがないので、いろいろあきらめたほうがいいと思うよ。
ちなみにこの先の未来を簡単に予想すると、資本主義自体の支配はそうは簡単に揺るがないが、市場経済の絶対的な信頼というのはかなり薄れるだろう。資本はまったく供給過多に陥り、反セイの法則が経済の前提になる。そうすると、国内に需要を見出せなくなった企業のM&Aによる植民地化が加速し、まさに第二次大戦前の陣取り合戦が再燃するんだと思っている。かたちはどうあれ世界大戦への道を再び歩むのだろう。日本は一足早く反セイの法則下の経済運営を勉強しているから今後に活かせる部分も多いと思う。
※こっから先追記
- あんまり関係ないけど金融に興味があればこちらも是非。PEファンドに関する誤解 - よそ行きの妄想市場経済の意味合いが薄れると、単純な取引所よりファンドが有効かも。
- 例えば池田先生は、あいもかわらず政府の対応目線なわけだが、これは経済学とは政府のパンフレットを書く仕事であるというケインズの命題に沿った正しい対応だと思う。ただ、真面目に考えると、米国政府がやっているような「なんでもすぐに明るみに出して、マーケットに底を打たせようとする試み」は、当たり前だが底を打つから意味があるのであって、ただバカの一つ覚えで「国民への開示義務」を果たしていれば万事が解決するわけではない。/そして底を打たせるにはどのようなかたちであれ、政府の本格的介入が必要*5で、これからのマーケットはそのタイミングを見極めるというのが、ひとつの大きなテーマになるのだろう。
- こちらもどうぞ→日本株が上がると思う理由3つ - よそ行きの妄想