マルチSIMカードサービス

海外の話だけれども、マルチSIMカードサービスというサービスがある。

マルチSIMカードサービスとは、契約しているメインの回線に加え、同じ電話番号を持つSIMカードを複数枚発行するサービスである。各通信キャリアによりサービスの名称は異なるが、サービス内容はほぼ同一だ。マルチSIMカードサービスの基本的なサービス内容は、このようになっている。

1. 複数のSIMカード、いずれで発信しても相手側にはメインの電話番号が表示される
2. 複数のSIMカード、いずれを使っても料金はメイン契約回線を利用したものとして計算

何枚まで追加のSIMカードを発行できるかは各通信キャリアによるのだが、一般に1枚〜数枚程度のようだ。また追加のSIMカードは回線契約の追加ではなく、あくまでもメインの契約回線に付加して発行されるものであるため利用料金も基本料金に比べて低額になっている。たとえば香港CSLの場合は基本料金が最低で2000円/月程度だが、マルチSIMカードサービスは1枚あたり約420円・枚/月(HK$28/月)で利用でき、4枚までの追加発行が可能だ。

【世界のモバイル】1回線契約なのに複数の端末が利用できる!海外のマルチSIMカードサービスの恩恵(ITライフハック) - IT - livedoor ニュース

要するに、ひとつの契約回線で複数の端末での通信が可能になるということ。


さて、従来、携帯電話を何台も持つというのは割と限られた需要であったから、こういったサービスがそこまでキラーなサービスではなかったのだと思うが、先日iPadが発売されて随分状況は変わってきたように思う。

iPadはPCと比べて軽量であり、また起動もはやいなど、明らかに携帯して利用することが想定されており、買ったらつい持ち歩いてしまうであろうことは論を俟たない一方で、3G接続ができないいわゆるWi-Fi版は無線LANスポットでしかインターネット接続できないから、結構ストレスを感じることになる。あんなものネットにつながらなければただのデカイ手帳だし、スタバやマックなど、無線LANスポットは増加する傾向にあるとはいえ、現状はまだ限りなく少ないと言わざるを得ない。

そうすると、孫正義氏も言うように、「真面目な話、3Gの方がお薦め」ということになるわけだが、3Gの問題点は要するに高いということだ。

例えば、もともとiPhoneなりの携帯電話を持っていたとして、そこにiPadを追加したとする。大体いまiPhoneを持っていると、通話料を除いたデータ通信料として月に4,500円くらいはとられる。で、iPadも基本的に同じだから、あわせて9,000円くらいになる。

9,000円という金額が高いと感じるかどうかは人によるだろうが、私が気に入らないのは、通信料が倍になる一方で、じゃあ我々ユーザーが通信するボリュームが倍になるかと言えばそういうわけでもないわけで、結果としてキロバイトあたりの通信単価が跳ね上がっているという点だ。我々が日々通信するデータ量を決める要素は、取得の目的たるデータやネットを介して提供されるサービスの有無なのであって、手元の端末の台数ではない。電話機を2台や3台に増やしたところで話相手となる友人がいなければ通話時間は増えないということと一緒である。

この通信単価の上昇に、正当な根拠はまったく見いだせない。これはおそらく、通信キャリアが端末も支配するという携帯電話業界の構造からくる歪みではないか。端末は安く(もしくは無料で)配布して通信料で回収みたいなことがまかり通っているから、どこまでが端末代金でどこからが通信料かという境界がファジーになっているわけだ。常識で考えると、端末を増やしただけで通信料が増額になる道理などどこにもないだろう。

今後、それこそiPadのように、通信キャリアに対して強い交渉力を持ったメーカーが、既存の業界構造に捉われず、通信機能のついた魅力的なデバイスを販売するというケースは増えていくと思う。任天堂がDSの3G端末を出すこともあるかもしれない。ソニーは、PSPケータイを開発中だそうだ。

そうなってくると、冒頭で紹介したマルチSIMカードサービスへの需要は今後急速に高まるのではないだろうか。

ということで、孫さんにtwitterでつぶやいてみたのだった。
Twitter / CHNPK: @masason マルチSIMカードサービスを開始されると、 ...
当然返事はない。


ちなみに、ポケットWi-Fiはなかなか便利そうだが、やっぱり(携帯電話とあわせると)2台分の通信料を払わなくてはいけないこと、持ち歩く端末が無駄にひとつ増えること、ポケットWi-Fiの充電がインターネット接続における強力なボトルネックになること、などがイマイチであると感じる。