我が国の政治家というのは何故こうもバカばっかりなのか

面白いものを見つけた。

民主党は何のために消費税を10%に引き上げるのか ~菅首相ブレーンの小野善康・大阪大学教授に聞く|辻広雅文 プリズム+one|ダイヤモンド・オンライン

菅首相のブレーン的な存在を務めるとされる小野善康大阪大学教授という方が、菅首相が力説する「第三の道」なるものを解説している記事。まあリンク先は何だかわけのわからない理屈がくどくどと書いてあって、わざわざ読んでいただくのも時間の無駄なので、とにかく下の図を見てほしい。



曰く、第一の道というのは「自民党が得意とした公共事業などを通じたばら撒き政策」で、第二の道というのは「規制緩和を通じて競争を促進し、生産性を向上させ、経済の体質を強化する小泉構造改革路線」を指すらしく、そして、第一の道及び第二の道がいずれもうまくいかなかったため、今般新たに第三の道を定めたのだと、どうもこういう話らしい。

菅首相は、首相就任前の昨年11月から「第三の道」なるものについて深く考慮中であられ、今般その努力がついに実を結んだ格好である。

時間の無駄

いち日本国民として、自国の進むべき方向性が明確に打ち出されることは実に喜ばしいことである。ただ、ちょっと待ってほしい。

よくよく見てみると、「第三の道」というのは増税によって得た歳入を医療・介護・環境などの分野に投じ、もって雇用を増加させるというものらしい。見事なまでに「第一の道」と同じ「道」である

確かに字面としては、「第一の道」において借金だった部分が、「第三の道」とやらでは増税になっているが、政府の借金というのはつまり将来の税金の前借りに過ぎないわけだから、そこにはいつ増税するかという時点の違いがあるだけで、根本的にはまったく一緒である。単に負担が増えすぎて将来にツケを回すのもそろそろつらくなってきたから、ここらで増税しますかということに過ぎない。

政府がカネを投じる先も、「第一の道」では公共事業と記し、「第三の道」においては医療・介護・環境分野など育成という記載の仕方に変えて違いを演出している風だが、政府が主導する事業なのだからどちらも公共事業に決まっている。公共事業の内容が、従来のインフラ設備投資から医療や介護などのサービスに移り変わっただけだ。

繰り返すが、ただの「第一の道」への回帰である。こんな小学生でも訝しがるであろう幼稚な詭弁に本気で心酔しているのであれば、半年近くに及ぶ管首相の深い考慮は、ただの時間の無駄だったと断ぜざるを得ない。

ただのバカ

挙句の果てには、同インタビュー記事の終盤においてこの変なオッサンは、インタビュアーからの、「違いは、道路建設などの公共事業ではなく、介護・医療・環境などの成長分野で政府事業を行うことか」という割と的を射た質問に対して、次のように答えている。

重要なのは、誰にも成長分野など分からない、ということだ。私にも、分からない。政府にも分からない。だから、どんな分野におカネを使ってほしいのか、政治家は国民に聞くことこそが大事だ。その多数決で判断すればいい。道路が必要だという人が多ければ、道路を作ればいい。それが、民主主義というものだ。菅首相は、それは介護分野だと判断したのだろう。

民主党は何のために消費税を10%に引き上げるのか ~菅首相ブレーンの小野善康・大阪大学教授に聞く|辻広雅文 プリズム+one|ダイヤモンド・オンライン

まったく答えになっていないところも強烈だが、成長分野は「多数決で判断すればいい」として、「それが、民主主義」とぶち上げた次のセンテンスで、「菅首相は、それは介護分野だと判断した」と数秒前までの自身の発言を一切無視して明後日の方向にかっ飛ばすセンスには脱帽せざるを得ない。「多数決」の「民主主義」は一体どこへ行ったのか

そもそも、医療や介護といった労働集約型の低付加価値産業のどこをどう見たら成長分野と映るのか、一度ちゃんと説明してみて欲しい。確かに爺婆はたくさんいるから需要が底堅いことは明らかだが、成長するかと言えば話は別である。実際、これだけ手厚い社会保障費を政府が負担しても、大半の病院や介護施設は赤字経営なのだ。こんな低付加価値産業に限りある資本を投下し続けたら、我が国は痩せていく一方だ。成長産業が何かというのは確かに難しい問いだが、どう考えても成長しないかしても限界があるという分野なら大体の見当はつく。

どうしてこうなった

前の首相も発言はぶれるわ、利害調整はまったくできないわで、かなりひどいものがあったが、今回の首相も相当キてると感じる。

何故こうも次から次へとバカが湧きでてくるのかと言えば、長きに渡った55年体制で培われた日本の政治システムにおいては、政治家の果たす役割というのは基本的に選挙の時に票を集め、政権の安定性を高めるというただ一点でしかなく、残りのすべての業務は我が国最大のシンクタンクたる霞ヶ関に丸投げすることで何とかまわっていたにもかかわらず、政治主導などと言ってその体制を崩してしまったから、政治家の無能が怒涛のごとく露呈しているということではないかと思われる。

要はメッキがはがれただけで、きちんとしたサポートしてくれる人(官僚)を持たない政治家というのは、おそらく大体こういう感じなのではないか。

ただ、必ずしも悲観すべきとは言い切れない。たまたま今日話題になったこちらこちらで論じられているように、この国は一度実質的に滅びないと「次」にいけないという可能性が高いから、現在のような惨状もきっとそのために必要なステップなのだろう。