PVジャンキーの末路
先週末に東北地方と関東地方を襲った大地震は本邦観測史上最大級の規模とのことで、その凄まじい被害にはただただ息をのむばかりであり、このブログも更新を自粛しようかなどと少し考えたりもしたものの、別に私がブログの更新を控えたところで誰が助かるわけでもなく、おかしな自己満足に浸って自粛のスパイラルに嵌るよりも、いつも通りお気楽な妄想を垂れ流して世間様に苦笑されることこそが当ブログの使命かなどと思い、いつも通り更新することにした。
さて、今回の大地震ような危機が発現し、国民がパニック状態に陥り、正確な情報が不足すると、「政府は真実を隠している!」などからはじまる壮大な演説をぶち、大衆を扇動しようとする輩が必ず出てくるが、これは本人の意図とは異なり無駄に大衆を混乱させるケースもある非常にリスキーな行為で、動機如何によっては下種であると断ぜざるを得ない。
池田無双
一部では既に盛大に批判されているようだが、今回、池田信夫先生が、NHK時代に原発の取材をしたことがあったからだかなんだか知らないが、福島の原発に関する不穏な報道が流れるや否やフル稼働を開始し、推測を織り交ぜた速報を精力的に世の中に発信されていたのが実に印象的であった。
以下では、特に印象に残ったツイートを引用し、個別に検証していきたい。
まずは以下の2つ。上のポストの方が時系列的に先に投下されていることに注意してほしい。
誤解をまねく表現がありました。「スリーマイル以上」というのは建屋が吹っ飛んだ点で、燃料棒などが(おそらく)まだ大気にさらされていない点では「スリーマイル未満」です。
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2011-03-12 18:22:01
原子炉建屋だったようですね。これで格納容器が裸になったので、スリーマイルより悪い。http://ow.ly/4d1rh (追記あり)
Twitter
2011-03-12 20:47:39
上のポストにおいて、「スリーマイル*1以上」という言い方に誤解を招く恐れがあることを認めておきながら、何故かその後も執拗に「スリーマイルより悪い」とする主張を繰り返す池田先生。
ご本人も指摘している通り、スリーマイル島では人的被害はゼロで済んだのだから、こういう場合、「スリーマイル以上」ではなく、「スリーマイル程度で済む」というような言い方をするのが常識的な言語感覚というものではないだろうか。いや、燃料棒*2が外気にさらされていないという点で、スリーマイルに対する大きなアドバンテージが残っているわけだから、「スリーマイル程度」という言い回しでも人によっては過激に感じる可能性は高い。ちなみに結果論ではあるが、最終的に事故としてはスリーマイル以下の水準ということで落ち着くのではないかというのが、本稿執筆時点における専門家間のコンセンサスのようだ。
結果論は置いておくとして、上記池田先生による発言当時、事実として建屋が吹っ飛んでいたわけだから「スリーマイル以上」という言い回しも不可能ではないのだろうが、こういう局面でわざわざそういう言い回しを持ってくるのは、傍目には注目を集めたいからやっているとしか思えない。
実際には、こうした煽り気味の口調は池田先生のお家芸とでも言うべきものであって、普段の池田先生のネタエントリーとまったく同じ雰囲気を漂わせているから、よく訓練されたはてなーであれば落ち着いて対処できるものであるが、発言当時の緊迫した雰囲気のなか、上記のような些か過激な発言が、池田先生の物言いに対する耐性のない人の目にまで触れてしまい、いらぬ混乱を招いたのではないかといういらぬ心配は捨てきれない。
次のように言うことが出来るだろう。この人は煽りが板につきすぎて、もはや煽らずには喋れないのだと。
我々はブックマーカーとして、アルファブロガーが自らが作り上げたキャラに飲まれるのを何度となく見てきた。これはまさにPV*3ジャンキーたる憐れなアルファブロガーの哀しい末路なのである。
次の発言の検証に移ろう。
「原子炉建屋かタービン建屋かわからない」という不自然な発表は、原子炉が「爆発」したと思われるとパニックになるのでごまかして時間を稼ぎ、ホウ素などの措置とワンセットで発表するためだろう。こんな大事なときに嘘をつくことが国民の信頼を失うことに気づかない役人の浅知恵。
Twitter
2011-03-12 21:13:35
普通の人は、原子炉建屋かタービン建屋かの区別に固執したりしないだろうから、特に不自然な発表だとは私は思わなかった。むしろ、役人を浅知恵とまで罵る姿勢こそ不自然で、更には「原子炉が『爆発』したと思われるとパニックになる」という、あたかも本当は原子炉が爆発したんだよとでも言いたげな言い回しも無駄に不安を煽るものとしか言いようがなく、本人にその意図がなく無意識にやっているとしたら、完全に病気としか言いようがない。
これについてもご本人が指摘するとおり、実際に爆発したのは原子炉自体ではなく建屋*4だったわけだが、世の関心はまさにこの点、即ち原子炉自体が破損したのか、外側の建屋が破損しただけかという点だったのであり、このタイミングで突然「原子炉建屋かタービン建屋か」に固執するのは、難癖をつけたいだけではないのかという疑念が拭い去れない。
大体、「原子炉が『爆発』したと思われるとパニックになる」のは、ジョセフ・ジョースターの言葉を借りれば「コーラを飲むとゲップが出るということと同じくらい確実」なことであるから、「原子炉が『爆発』したと思われる」ことをできるだけ避けるのは当然の措置なのであって、浅知恵などと揶揄される必然性がまったく不明である。
この発言についても、根底にあるのはやはりPVへの渇望だろう。役人をこき下ろして自らの権威付けを行えば読者が増えるという構図を無意識のうちに実行している可能性は否定できない。
さあ、極めつけは以下のツイートだ。
きのうは33万PV。aicezukiを上回る私のブログの最高記録。疲れたので、もう寝ます。
Twitter
2011-03-13 00:08:40
33万PV/日というのは確かに桁違いで、同じブロガーとして、つい自慢したくなる気持ちもわかる一方、こんなときに自慢しても読者の心証を損ねるだけで、百害あって一利ないことは誰の目にも明らかであるにもかかわらず、このようについ無意識にPVを自慢してしまっているのは、まさにジャンキーのジャンキーたる由縁だ。
「疲れた」などと、まるで市民のために戦い抜いたかのような言い草だが、実際はテレビを見ながら思いつきをつぶやいていただけで、うちの息子(5歳)と大差ない。
うちの息子もテレビから緊迫感が伝わったのか、いつもよりはやい時間にリビングで就寝してしまったが、要するにそれとまったく同じであり、人間年を取ると幼児に退行するという俗説をさりげなく裏付けているのは、本件で唯一と言っていい微笑ましいポイントだろう。
正真正銘のカス
そうはいっても池田先生は、普通の人よりも原発について詳しかったのは確かであって、そもそものところにあったのは恐らくその知識を活かそうという正義の動機であり、煽ってしまったのは、いつもの癖でついアクセルを踏み過ぎてしまっただけであることは、我々はてなーにとっては自明であるが、以下の人物は純粋な目立ちたがりだと断言してよいだろう。
Gucci Post- ブログ記者によるオンライン新聞 グッチーポスト -
もう明確に「第二のチェルノブイリ」などと断言しており、完全にアウト。発言の不用意さを指摘されると、政府関係者なども自分のブログを見ているから、あなた方のコメントは日本の役に立っているなどとわけのわからない詭弁を弄すあたり、もしかすると本人が一番パニックに陥っているのかもしれない。
ただ、こいつは、むかし植草教授が逮捕されたときに植草教授の友達だなどとホラを吹いて、あることないことでっち上げ、注目を集めた人物だそうで、さらにその前は、ライブドアショックのときもおかしな陰謀論のようなものを吹聴して回っていた急先鋒のような人物なので、こちらは正真正銘のカスであると断言していいように思える。
*1:[http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%83%AB%E5%B3%B6%E5%8E%9F%E5%AD%90%E5%8A%9B%E7%99%BA%E9%9B%BB%E6%89%80%E4%BA%8B%E6%95%85:title=スリーマイル島原子力発電所事故]。1979年3月28日、アメリカ合衆国東北部ペンシルベニア州のスリーマイル島原子力発電所で発生した重大な原子力事故。
*2:[http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%87%83%E6%96%99%E6%A3%92:title=核燃料をセラミックに焼き固められた燃料ペレットを燃料被覆管に封入して、端栓で気密にしたもの]
*3:ページヴュー。ウェブサイトの閲覧数。
*4:建屋の中に原子炉が入っており、さらにその中に炉心があり、燃料棒が入っているという整理。