ソフトバンクに見るスマートさの秘訣

ソフトバンクの2011年3月期の決算が発表された。業績は絶好調らしく、同社としては初の売上3兆円を達成だそうで、何やら景気がよろしい感じなので少し覗いてみたわけである。ソフトバンクとはあまり縁のない人生を歩んできたので、決算書を見るのはもう何年振りかというような気もする。

ソフトバンクと企業買収

というわけで、ソフトバンクの決算短信を見てみると、セグメント別損益の説明に大胆にページが割かれており、否が応でも目に入ってくる。その注目の内容は概ね以下の通りである。

移動体通信事業というのが、要するにボーダフォンの買収で新設された通信キャリア事業だが、同事業による売上高および営業利益が全体の64%を占めている。さらに、2010年3月期からの売上高の増加分については、ほぼ完全に同事業の伸びによるものとなっている。ソフトバンクの成長をけん引しているのは、間違いなくこの移動体通信事業だ。

ソフトバンクにとってボーダフォンの買収は大きな賭けであったことと思う。1兆7千億円という買収金額は日本のM&A史に残る巨額なもので、国内のLBOとしては過去最大ではないだろうか。そしてソフトバンクは、今のところ、この賭けを成功させていると言っていいのだろう。ボーダフォンソフトバンクモバイルとして生まれ変わり、周囲の予想をはるかに超える成長を遂げている。上の表を見れば明らかなとおり、この1年だけでも営業利益が1.5倍になっているのだ。いまソフトバンクモバイルを買収しようと思ったら、きっと1兆7千億円では全然足りないだろう。

ボーダフォンだけではない。固定通信事業を担うソフトバンクテレコム(旧:日本テレコム)もヤフーも、全部買収してきた会社だ。ソフトバンクが高成長を実現してこれた最大の理由は、間違いなく企業買収にあると言ってよいだろう。

ちなみに、ソフトバンクは、もともとは社名の通りPC向けパッケージソフトの卸売を行っていたわけだが、一体あれはどこに行ってしまったかのと思えば、どうやら”その他”に入っているようだ。この”その他”セグメント、子会社数では96社と実に全体の8割以上を占めるが、売上的には全体の1割ちょっとしかなく、なんとなく捨てるに捨てられないものをしまっておく倉庫のような、実に物悲しさを感じるセグメントである。

ソフトバンクはM&A業界の白眉

さて、私は別にソフトバンクが本業を捨て、買収に次ぐ買収で成長してきたことを嘲りたいわけではない。まったく逆で、ここまで何度も大型の買収というか投資を成功させていることに心底感服しているのだ。

企業買収というのは言うほど簡単ではない。投資に際して企業の成長性を判断するためには市場や業界の動向に関する深い理解が不可欠だし、買収した後も対象会社のハンドリングには様々な課題があることが常である。さらに、”いい会社”であればあるほど買収金額は高騰するから、元を取るためにはシナジー効果の発揮など、あらゆる価値創造の仕掛けを活用して対象会社の利益を伸長させなければならない。

一般の人はむしろ成功例の方を多く見るだろうから、M&Aの難しさと言われてもピンと来ない方もいるかもしれないが、業界的には、成功するM&Aは2割未満だと言われている。8割以上のM&Aでは、価値が生み出されるどころか損が発生しているということだ。そんな中で次から次へと巨大なM&Aさせるソフトバンクは白眉な存在なのである。

ソフトバンクのようにあれだけ巨大な企業買収をいくつも成功させているような会社は、考えてもなかなか浮かばない。海の向こうにはウォーレン・バフェットという怪物投資家がいるが、実績だけ見れば、孫正義はバフェットに匹敵する投資家ではないかとすら思う。

孫正義とバフェット

ところがその割に、孫正義にはなぜかスマートで知的な印象がまったくないという点が実に不思議ではないだろうか。例えば、バフェットが敬愛の念を込めて「オマハの賢人」と呼ばれるのに対して孫正義は親愛の意を込めて「禿」と呼ばれている。

孫正義とバフェットのイメージの間に横たわる巨大な溝。私はこの土日を使って、恵比寿ガーデンプレイスでビール片手に、必死でこの謎に迫ってみた。しかし恐ろしいことに、「見た目」以外の答えはまったく浮かばなかったのである。twitterでも質問してみたが、帰ってきた答えは、「老けてるから」(ビジュアル)とか、「頭が宣教師みたいだから」(ビジュアル)とか、「ハゲタカを連想させるから」(ダジャレ)とか、見た目に関するものばかりだった。

なんだろうか。結論としては実にパワー不足であるが、これだけ偉大な実績を積んでも全く覆らないほどに、見た目のイメージというのは実に強固なのだなあと思うわけであり、人は見た目が9割というのはまあよく言ったものだと思うわけである。

「もしも孫さんが佐藤浩一だったら?」もしソン。RT @chnpk: 見た目説強すぎ。RT @aqrcity 見た目RT @CHNPK ソフトバンクの孫さんて、あんだけ買収成功させてるのはホントに凄いと思うんだけど、なんかスマートなイメージないよな。なんで?

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もし、孫正義の外見が佐藤浩市だったら、ソフトバンクのイメージはどのようなものになっていたか。みなさんも考えてみて欲しい。