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はてなーにもわかる米国政府による不良資産買取という「おわりのはじまり」

米政府、不良資産買い取りに公的資金75兆円投入を提案だそうだ。やっぱりはてなーにはちょっと難しそうなので、前回に引き続き解説を試みるよ*1

先日、ここで書いたとおり、いま起こっているのは金融機関が保有する「捏造された信用」が突然紙くず同然になってしまい、資金繰りが立ち行かなくて困った、という話である。


今回発表された、政府による買取機構というのは、要はこれらの紙くずを政府が一旦買い取りましょうという話で、これがそれなりに市場からの評価を得ている。
なぜならそれらの紙くずは一時的に紙くずになっているだけで、時間をかけてぐちゃぐちゃになってるのをほどいたり、しわを延ばしたり、破れたのをくっつけたりしたら、ある程度価値のある紙くずではないものが出てくる可能性があるからだ。例えば、サブプライムローンの例で言えば、もとをただせばただの担保付の住宅ローンなわけであって、理論的には、土地の値段がゼロにならない限り証券化されたサブプライムローンの価値もゼロにはなり得ない。しかしそれらが目下ゼロ評価に向けてまっしぐらに暴落しているのは、期待されていた価値(捏造された信用)が大幅に減ぜられた*2ために、マーケットが不安になり、流動性がなくなってしまった、つまりまったく買い手がつかなくなってしまったためなのだ。こうなると本来の価値なんてなんの意味もない。買い手がつかないものには実質的に価値はなく、換金性が乏しい金融商品には買い手がつかないのである。
こういう事情なので、今回発表されたような対策を政府が実施することには、一定以上の合理性がある。75兆円とかいう天文学的な規模の資金を、いつ終わるともわからない膨大な作業に、長い目で投下できるのは、さすがに政府くらいのものだからだ。もし、「最終的に見つかるであろう本来の価値」が予想通りのもので、しかも「それを見つけ出す作業」がスムーズに進行しさえすれば、このたび政府がやることは「一時的な」信用の補完であって、マーケットから歓迎されるのは当然だし、是非やるべきだ。


ただこの作業は、例えるなら、誤ってシュレッダーにかけてしまった膨大な数の書類を手作業で全部復元してから、本当に必要なたった数枚の書類を探し出すようなものであって、言うほど簡単ではない。しかもすべての復元に成功したとしても見つかった書類が期待していたほど大したものではなかった、というケースも十分に考えられる。
今回の解決策はご存知かもしれないが日本がバブル崩壊後のいわゆる失われた10年を最終的に処理した方法であって、なにも目新しいものでもなんでもない。では、考えて見て欲しいのだが、そんな当然の帰結のような解決策があるのであれば、何故いままでやらなかったのか。
それは「最終的に見つかるであろう本来の価値」の目算がまったくたたなかったからではないだろうか。この価値が結果としてなーんにもありませんでしたでは、残るのは疲労と借金だけであって、これはこれであまり冗談にならない。さらに始末が悪いのは、たとえ本来の価値が見つかっても、それを現金に戻すには、今はすっかりいなくなってしまった買い手が再びあらわれないとならず、それにはマーケットが落ち着きを取り戻す必要があるということだ。これはいつまでかかるのかまったくわからないだけでなく、そのマーケットは今回を最後に終わりかもしれない。この場合も莫大な借金だけが残る。
つまり、米国はハイリスクな賭けであることは承知しながらも、次々に明るみに出る金融機関の巨額の損失と、冷静さを失っていくマーケットを目の当たりにして、やむを得ず賭けに出ざるを得ない状況に追い込まれたということだ。


ところで、この借金というのは当然米国の借金のことであって、要は米国債のことだ。米国政府というのは、日本と違って*3国債を外国に売りつけることによって、財政をバランスさせている国だ。この借金は無限にできるのだろうか。そんなはずがない。
アルゼンチンがデフォルト(債務不履行)してIMFのお世話になったのは記憶に新しいが、米国といえど、借金が返せなくなったらデフォルトするしかない。いまはまだ、(日本をはじめとした)米国を信用して、または米国の支配が揺らぐことを恐れて、米国債を買う人たちがある程度以上存在しているから、米国は自転車操業さながらに借金を繰り返しながらなんとか生きながらえているが、例えば金利上昇によって利払いが増えつつ、米国債の需要が鈍化したらそのときがデフォルトするときである。
そして上で紹介したこのたびの米国によるハイリスクな賭けにおいて、米国が何かしらミスをしたとする。米国の信認は一気に低下するだろう。金利は上昇を続けるが、どれだけ金利が高かろうが返って来ない恐れのある先にカネを貸す奴はたぶん日本くらいしかいない。その日本だって、個人資産が1400兆あるらしいが、国債の残高がもうすぐ1000兆円だから、これ以上出せるカネはそんなにない。ない袖は振れない。
そうなったら返済は不可能*4で、デフォルトするしかない。現に金価格は再び上昇をはじめているらしく、この背景に米国の信認低下があることは間違いないだろう。


まあそうはいってもさすがに基軸通貨が突然デフォルトして紙くずになってしまっては、いくらなんでもわけがわからなすぎることになってしまうので、アラブだとかロシアだとか中国だとかも*5最後はしぶしぶ米国を支えることになるだろう。しかし、そうなった場合において、みんなに支えながらようやく立っていられる米国が今のように威張っていられる道理はまったくないし、しぶしぶ団結した彼らがその後も手を取り合って歩み始めるかというと、現実はそんなドラゴンボールのようには甘くない。こうして世界は秩序を失い、新しい秩序に向けた小競り合いをはじめるのである。
いずれにせよ、今回の米国政府の偉大な決定は、たしかに「はじまりのおわり」かもしれないが、なによりも実に壮大な「おわりのはじまり」だろうなあと思うわけである。

*1:シリーズ化を賭けて

*2:ちなみにこのことの原因は信用の根幹であった「格付け」が崩壊したためで、「格付け」が崩壊したのは、優先弁済だろうが劣後弁済だろうがエクイティだろうが潰れるときはみんな一緒という当たり前のことにみんなが気がついたからだ。

*3:日本の国債は個人の金融資産とバランスしてるからそんなに問題は深刻ではない。

*4:考えなしに貨幣を増刷するとインフレになって金利が上がる

*5:もしかしたらイスラム諸国でさえ