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価格メカニズムと転売屋の功罪

転売屋という言葉は、普通に一般でも使うと思うが、ネットで転売屋と言うと、基本的には人気商品を買い漁り、ヤフオクやAmazonマーケットプレイスなどの個人間取引市場において定価の数倍という高値で転売することを生業としている人たちを指すことが多い。より侮蔑の念を込めて転売厨と呼ばれることも少なくない。

嫌われ者の転売屋

転売屋は、ネットでは大の嫌われ者だ。
先日、珍しく転売屋批判を単なる感情論だと切って捨てんとする猛者が現れたようだったが、本人の論自体が根拠のないただの感情論だったので、むしろ返り討ちにあっていた。
転売屋disはただの感情論 - Togetter

かくいう私も、昨年末、こどものクリスマスプレゼントにと思っていた仮面ライダーオーズの変身ベルトがどこに行っても売り切れで買えず、仕方なしにAmazonマーケットプレイスで購入したら定価の倍くらい払わされ、非常に悔しい思いをした経験があるので、転売屋を目の敵にする人の気持ちはわからないでもない。

ただ、やはりネットの転売批判は行き過ぎているようにも思うし、転売という行為が需給に対してどういう影響を及ぼすのかというのもなかなか興味深いので、ちょっと考えてみた。

需要と供給

そもそも、転売のチャンスが生じるのは供給量よりも需要量が多いときであって、それがどういうときかと言うと、販売価格が均衡価格を下回っているときである。

均衡価格において、メーカーの供給に対するインセンティブと、消費者の購入に対するインセンティブがバランスし、需要量と供給量が一致する。以下の図で言うと、価格が300円のとき、需要量と供給量が一致するが、それ以下だと供給が不足する。つまり、買いたくても変えない人が生まれることになる。

転売需要

販売価格が均衡価格よりも安く、それ故に供給量が不足すると、その商品を買い集め、どうしても欲しがる人に市場よりも高い値段で転売するという行動が合理性を持つことになる。これが転売屋だ。

そして、転売の需要は、販売価格が割安であればあるほど強くなる。商品の割安さこそが、転売屋の収益の源泉だからだ。よって、転売屋の需要曲線は、均衡価格よりも下で発生し、価格が下がるほど傾きが緩くなる(需要の価格弾力性が高くなる)。

転売需要が加わることによって需要曲線は、以下の図のように右方向にシフトする。つまり、需要が増える。そして需要曲線がシフトした分だけ、さらに商品が不足する。転売屋のせいで、買いたい人が買えなくなっているという批判は、まさにこの状況を指してのことだと思われる。

価格メカニズムに対する作用

経済学の教科書によれば、販売価格は「見えざる手」によって導かれるように均衡価格に収束し、結果的に供給量と需要量は自然と一致する。

何故そんなことが起こり得るかというと、需要が供給を上回ると価格が上昇し、価格の上昇がメーカーにとって供給量を増やすインセンティブとなるからだ。それによって供給量が増え、需給のギャップは徐々に縮まり、最終的にはそれ以上つくっても欲しがる人はいないという点で市場は均衡する。

このように書くと、転売屋はまるで「見えざる手」の一部か何かであるような印象を受けるかもしれないが、よくよく考えると、少し「見えざる手」とは勝手が違うことに気づく。

転売屋の利益は転売屋の利益であって、メーカーには一切還元されないのだから、転売マーケットでいくら価格があがろうが、メーカーにとって商品を増産するインセンティブにはならない。安い値段(上の図で言う200円)でも売れるのは売れるのだから増産すれば良いと思う人もいようが、メーカーにとってすれば限りある資本を利益率の低い商品の製造のために投下すると機会費用が大きいから、やはり基本的には商品の価格が上がらないと、増産はしづらいと考えられる。

商品が増産されない中で、無理矢理に転売によって市場を均衡させると、以下の図のようになる。本来の均衡点よりも更に高い位置で市場が均衡しているのがポイントで、下の例で言うともともとの価格の2倍、本来の均衡価格の1.3倍もの価格で消費者は買わされていることになる。これでは消費者から不満が出るのも当然だ。

より効率的な市場へ

この忌々しい転売利益を消滅させるにはどうすればよいか。答えは非常に簡単で、メーカーがこの利益を取り込めばよいだけである。上で述べた通り、メーカーにとって利益が増えることは商品を増産するインセンティブになるから、メーカーが転売屋を子会社などにしてしまうことができれば、効率的な市場の実現への道が開かれることになる。

だったらはじめから転売屋などいなければいいと思う人が多いかもしれないが、それは誤りだ。メーカーは、もともと短期のうちに価格を変動させることはできないからだ。経済学の需給均衡のモデルは長期のモデルなのだ。

インターネットオークションなどの消費者の需要量が即座に価格に反映されるインフラが構築され、そうしたインフラをフルに活用した販売手法が確立され、そしてその手法をメーカーが獲得し、販売状況を即座に生産に反映することができるようになれば、市場は過去に例のない速度で均衡に到達し、メーカー及び消費者双方の厚生は劇的に改善するだろう。

だとしたら、いま、転売屋は新しいインフラを活用した販売手法の確立のために一役買っているという見方もできるのかもしれない。

これは、きちんとワークすればイメージ的にはユニクロのSPAモデルに近い。転売屋の中からユニクロのような大企業に化ける先が出てきたりしたら、面白いと思う。

参考