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はてながCFOを募集していると聞いて

ビジネス

はてながCFOを募集中だそうだ。

はてなが上場目指しCFOを公募、年収最大1200万円 4社がサイトで幹部募集 - ITmedia ニュース

一瞬「あ、そう」とスルーしそうになったが、FTTHさんに煽っていただいたことで、「はてなでブログを書いてる金融方面にちょっと明るい人」という自らのポジションを思い出し、上記職に応募してみるのも面白いのではないか(笑)と思い至った。


しかしビズリーチである。

この出会い系サイトをベースに開発されたとしか思えない転職サイトは、転職者側から(も?)カネを取る。そうすることで真に転職者の側に立ったサービスが提供できるというのが建前というか大義名分らしいが、要は企業の採用担当者やヘッドハンターから手紙が来てるよと転職者を煽って、手紙の中身を読みたかったら課金ね、というビジネスモデルだ。人生で一度はヘッドハントされてみたいという庶民の哀しい願望を突いた画期的なサービスだが、実際問題としてアクセスしてくるのは、ヘッドハンターとは名ばかりの単なる人材紹介会社(それこそリクルートエージェントなど)なので、素直にGoogleで検索のうえで直接こちらからコンタクトしたほうがはやいし、カネもかからなくて良い。

年収1,000万以上の転職に特化というのもウリのようで、従来あまり表立って募集されることの少なかった要職の案件に力を入れており、今般のはてなCFOと同じように、先般はリーブ21だかの次期CEO候補の募集を行なっていた。おそらく、これら企画においても応募者からカネを集めるのだろう。

何という記念受験。縁日によくある高額景品には紐がつながってないくじ引きにも似ている。

というわけで、なんとなくの面白半分でビズリーチにカネを巻き上げられるのはあまりにもシャクなので、まずはこうしてブログに思いの丈を書き綴り、 読者の皆様の反応を伺うとともに、アフィ収入によってビズリーチへのお布施代を捻出しようというのが本エントリーの趣旨である。悪しからずご了承いただきたい。

CFOの仕事について

ということで、はてなCFOである。

このCFOというのは、ひとことで言えば、金融機関や投資家から会社の維持発展に必要な資金を集めてくる人のことだろう。確かに財務、会計における適切な処理や管理もCFOの重要な職務のうちだが、これらも結局は資金を集めるために最低限必要なことのひとつである。

例えば資金調達の必要のない商店街の八百屋は、複式簿記で財務管理を行ったりはしない。把握すべきことは、カネがいくら手元に残ったかくらいだからだ。これがひとたび金融機関などから資金を調達しようということになると、途端にBS、PLにキャッシュフローといった複雑な管理を求められることになる。これらはすべて、外部資本を管理することを目的として発達した手段なのである。ことほどかように他人の資本を調達するというのは厄介なことだが、それを統括するのがCFOという仕事であると理解している。

資金を集めるにあたっての最重要事項は、その会社の有する資産や営む事業の価値を説明することだ。何の価値もないところに、人は大事なカネを投入したりしないからだ。加えて、その説明は、「世界を変えるんです」といったような総花的なものや、「ハイパーテクストがマークアップなランゲージです」といった感じの専門的なものであってはならない。なにせ相手は金融機関や投資家なのだから、彼らにもわかりやすい言語で説明する必要がある。これをコミュニケーション能力と呼ぶかと言うと、まあそうなのかもしれない。

具体的には、(1)顧客は誰で、(2)会社が提供している価値は何で、(3)それによって収益を得る方法はどうで、(4)そこには競合がどれだけいて、(5)自社の利益を守る仕組みはこうでと、いわゆるひとつのフレームワークに則してミーシーに示したうえで、(6)ロジカルに数字を積み上げ、(7)最後にガツンとIRRを提示するというのが一般的ではなかろうか。この流れはまったく不可逆的で、かつ最初の方ほど重要度が高い。数字の積み上げやキャッシュフローの分析なんていうのは、実は多少の知識があれば誰にでもできることだし、聞く方も数字だけ見せられても何のことかさっぱりわからない。

結局CFOとして使い物になるかどうかというのは、財務面の知識があるというのは当然の前提として、それこそまったく専門外の人に対してであっても上手く説明できる程に、自社の価値についてしっかりと理解しているかどうか、そしてそれにCFO自らが共感できているかどうか、というところにかかっていると言っても過言ではないだろう。

よって、私もまずは、はてなの価値とは何かということについて、以下に説明を試みることとしたい。

はてなの価値

さて。突然だがみなさんは、神の視点で庶民の生活を悠々と見下ろしてみたいと思ったことはないだろうか?

または、業深き人間たちを一方的に断罪したいと思ったことは?

結論から言うと、ユーザーに対してこうしたユニークな経験を提供しているのが、"はてな"というインターネットサービスである。

はてなブックマークは、はてなによる売り出し方のピントがずれていることもあって、表向きは単にWEBサイトのブックマークをオンラインで管理して、みんなで共有しよう、そうすれば人気のサイトがわかるね、というだけのサービスである。ユーザーは、ネットサーフィン中に気になるサイトがあったら、はてなブックマークボタンを押下し、あとで探しやすいようにタグやコメントを添えて保存する。そうすると、マイページのようなところから自分がブックマークしたページを見返すこともできる。また、マイページからは、他の人がブックマークしたページを見て、ネットサーフィンの範囲をさらに広げることもできる。

以上がサービスの簡単な流れなわけであるが、この流れの中で、はてなは、あるページをブックマークしたユーザー全員について、そのIDとそれぞれがブックマーク時にしたためた一言コメントを一覧にしたページ、言わば「ブックマークページ」を生成する。ここが非常に重要なポイントだ。世にwebページは無数に存在するが、このブックマークページは、理論上すべてのページに対応して無数に存在し得る。

例えば、もしあなたがブログを書いていたとして。何の気なしにアップした日常の一コマに関しても、そこにパーマリンクがある限り、ブックマークページは理論上厳然と存在し、はてなユーザーはそこに思い思いのコメントを書き残すことができる。

これは、例えるなら、家の前に勝手に掲示板を建てられ、無駄に奇譚のない自分に対する意見を、極めて一方的に見聞させられるという状況に近く、気持ちの悪いことこの上ない。現実社会であれば確実に迷惑防止条例に引っかかるレベルだ。

しかしこの気持ち悪さというのは、偏にブックマーク"される側"のものであって、一方のブックマーク"する側"にあっては、これの裏返しとしての快哉を得ていると考えていただいて間違いないのである。

ブックマークページというのは、言わば我々の集合知によって形成された、神々の船である。いま、神の視座に立ち下界を見下ろすこととなった我々は、あらゆる事象に対して審判を下すことができる。
「これはひどい。」
「これはすごい。」
まさに縦横無尽、無人の野を行くが如しである。

ブックマークページのブックマークページというものも存在するわけで、ユーザー同志で議論が白熱すると、ブックマークページは多層的に折り重なっていく。神々の戦いだ。そうして何層にも重なって厚みを帯び、積乱雲のように発達したブックマークページからは、ときおり下界に対する裁きの雷がくだされ、周囲は例外なく炎上することとなる。

そう。これこそがはてなーの力なのだ。

冷静にブックマークページをいくつか眺めていると、確かに、客観的には集合知と言うよりむしろ衆愚と形容したほうが適切な状況は多い。しかしそんなことは関係ないのである。ユーザーは、自身の知的活動に疑いを持つ必要もないし、結果として生じる巨大な積乱雲について責任を持つ必要もない。薄気味の悪いブックマークページが量産されるのはシステム上の仕様であり、純粋なサービス利用の結果なのであって、ユーザーに責任などあろうはずがないではないか。

しかしながら一方で、この薄気味の悪いブックマークページこそが、ユーザーが心情を吐露することの敷居を大きく引き下げていることは間違いないのである。つまりはてなのユーザーは、神々の船たる巨大な雲海の一部としてコメントをすることができるのだ。

こうした"はてな"の仕様は、ユーザーの罪咎憂いを取り去り、ユーザーにある種の懺悔を促す。煩悩ロンダリングと言ってもいい。これこそがはてなの提供している価値なのだ。

はてなの現状

議論がやや抽象的な方向に傾きすぎた感があるので、少し具体的な状況を追ってみよう。

これは別にメタファーでも何でもなく、単なる事実として、"はてな"はいまや国内有数のSNSである。

インターネットにおける視聴率のようなものを計測しているalexa.comというサイトがあるが、そのトラフィックランキングで、はてなは堂々の15位である。日本国内では不動の地位を確立している1位のyahooを筆頭に、google,youtube,facebook,amazonといったなみいる強豪ひしめく中、twitterニコニコ動画のすぐ下、なんとmixiやmsnよりも上位に付けている。ただ一点、他サイトが大体星5つか4つの勝負をしている中、はてなだけ堂々の星3つと言うのが、実に"らしい"ところではある。同程度の低評価を受けているのは25位エロ動画のxvideos.comくらいであり、一体何と一緒にされてるのという点において失笑を禁じえないが、サービスのエッジが立っているからこそ批判も受けやすいということにしておこう。

おそらくfacebooktwitterといった海外SNSに押されてのことだろう。mixiが徐々にそのプレゼンスを失っていくなか、一方のはてなが、現状を維持するにとどまらず、力強くトラフィックを増やしている様が下のグラフからも見て取れよう。これをもってはてなは 、国内最大規模のSNSとしての地位を確立したと言える。

はてながSNSかという点については、これを疑問視する向きも当然あるだろう。実際問題、個別のサービスというのはブログであったり、ソーシャルブックマークであったり、QAサイトだったりするわけで、特に自らSNSと謳ったサービスは存在しない。

しかしサービス全体を眺めれば、まるでfacebookが、ユーザーがプライバシーを公開する敷居を引き下げることによってコミュニケーションを誘発しているように、はてなは上述したようなブックマークページの効力によってユーザーが本音を漏らす(懺悔する)敷居を大きく引き下げている。匿名ダイアリーという仕掛けも秀逸で、そこではまったく匿名の状態でブログのような文章を公開できる。IDすら紐付けされないまったくの匿名だ。見たことがない人は一度見て見ることをお勧めするが、発言に対する責任という呪縛から開放された、危ういほどにむき出しの心がしばしばアップされ、物議を醸している。

そうして吐露された本音、心情といった主観は、ときにブックマークページによって断罪され、ときにはてなスターによって共感され、はてなダイアリーによって拡張されていく。はてなブックマークは、いわゆる足跡機能のような役割も果たし、曖昧模糊とした個々の主観はその間テクスト性によって様々な意味を持っていく。こうしたプロセスは、つながりの可視化として言い表されるSNSの特徴と酷似したものだ。

その他にも、idコール自動トラックバックといった地味な機能も、微妙に薄気味の悪い<クネクネした>つながりを生み出しており、何とも言えない独自なソーシャルがネットワーキングされている。

これからのはてな

はてなが抱えているであろう課題をあげるとしたら、ユーザーの利用時間が短いことだろう。下のグラフは、mixiとはてなにおけるユーザーの1回あたり利用時間の推移をグラフにしたものである。上記グラフ同様、alxaのサイトから拝借した。

mixiの利用時間が1回あたり10分を超えているのに対して、はてなの利用時間は3分台である。ちなみにこの指標、facebookだと20分を超えてくる。これを少なくともmixi程度まで引き上げることが、はてなにとって喫緊の課題であると考えて間違いない。広告の単価にも関わってくる非常に重要なポイントだ。

ユーザーの利用時間を伸ばすためには、もっとユーザー間のコミュニケーションを活発にさせる必要がある。そのための施策も、私の方で2つほど考えてみたので喜び勇んで披露してみよう。

ひとつは、ブックマークページの多面化。そしてもうひとつは、ブックマークサービスの多層化である。

いま、ひとつのサイトに対応するブックマークページはひとつだけだから、ネトウヨもはてサヨも同じページで仲良くコメントし合っているが、これを複数ブックマークページに分けられるようにしてはどうだろうか、というのがひとつ目のポイントである。前提として、単に人気のサイトを探すことが目的の人のために、すべてのブックマークページを合算したインターフェースも用意する必要があるというのはあるが。

これによって、党派性が更に先鋭化する狙いがある。先鋭化した党派性は派閥間のコミュニケーションと言うか抗争を助長する。例えば橋下徹大阪市長が職員のメールを勝手に検閲開始というニュースひとつとっても、右寄りの思想の人と左寄りの思想の人ではまったく意見が異なる。これをそれぞれ似たようなもの同士で分けると、党派性が際立ち、議論にも一層花が咲くのではないかと思うのである。現状は、2ちゃんねるがどちらかと言うと右寄り、はてなが左寄りだが、ブックマークページを多面化すれば、はてなはこの対立を内製化できることになる。

多層化と言うのは、つまるところ神々の戦いを誘発する仕掛けである。現状、はてブタワーと呼ばれるようなブックマークページが多層的に折り重なる現象は時折みられるが、あまり正規な運用でもないので、一部の玄人はてなーによる独占状態となっている。これをもう少し一般にもわかりやすくして、利用を促すべきだろう。

ブックマークコメントに対して、返答や反論をするためのページを設け、元コメントに紐づけて管理すればよい。返答や反論はブックマークコメントと区別し、今でいう「ブックマーク数」(そのページが何人からブックマークされたか)のようなものには含まれないように配慮する必要はある。現状、こうした機能はtwitterなどによって間に合わせ的に代替されており、このことは、はてなの損失になっている。

何の気なしに眺めたブックマークページがあまり気に入らないものだったとして、現状のはてなのサイトだと、「臭いものには蓋」感覚でブラウザを閉じて終了だが、その気に入らないブックマークページに関する文句を書き込む場所に自然と誘導してあげる事が出来れば、そのユーザーは何倍もの時間をはてなで過ごすことになる。

薄気味悪さに一層拍車をかけるこうした機能強化によってユーザー間のコミュニケーションを増加させることに成功したら、あとはそれをわかりやすいインターフェースに整理して、WEB媒体に仕立て上げるだけだ。いまのはてなのトップページは単純にダサいので、もう少しtwitterなりfacebookなりを模した、流行りのインターフェースに挿げ替えた方が良いだろう。そのほうが、おそらく広告の取れ方もよくなる。

これらを行ったとして、はてなの業績がどの程度伸長するかというのは、正直現状の業績を知らないので積み上げるべき根拠もなく、まあ要するによくわからないのだが、少なくともいまのmixiの水準、即ち売上高150億、営業利益30億くらいというのは、十分射程圏内なのではないのだろうか。IPOを目指すということだから、時価総額は300億円くらい、調達額は60億〜90億円くらいだろうか。これだけの資金を調達することができたら、優秀なプログラマーやCOOを雇って、今度はオープンプラットフォーム戦略でも推し進めればよろしい。

はてながつくる未来

本エントリーもすっかり長くなってしまったが、最後にひとつの疑問に答えなければなるまい。それは、はてながもし順調に業績を拡大するようなことがあったとして、それが一体世の中にとって何の意味があるのか、ということである。

はてなは、これまで見たきたように、ユーザーのあらゆる思想、信条、並びに本音を暴きだし、間テクスト性によってそれらの意味づけを行う。これは、世界の再定義につながる偉業である。

世界をオープンにするという野望を掲げるfacebookとも少し似ているが、あちらの世界観が何となく実在論的であるのに対して、我らがはてなの提案する世界観は観念論的なのが特徴だ。はてなによって神の視点を得、肉体から解放されたた我々の魂は、目に見える事物・現象とは別の、理想的・普遍的な原型である「イデア(観念)」を想起する。

はてなユーザーの主観・精神によって終に「客観的な世界」は生成され、我々は"はてな"を通すことで初めて「客観的な世界」を知ることができるようになるのだ。


何だろうか。実におぞましい未来である。

参考

プロフィット・ゾーン経営戦略―真の利益中心型ビジネスへの革新
エイドリアン・J. スライウォツキー デイビッド・J. モリソン
ダイヤモンド社
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利益はなぜ生じるのか、という分析の書。似たような本は世の中にたくさんあるが、今のところ私が一番しっくりきているのがこちら。上の本文で述べたCFOの仕事についての具体的な流れもこちらを参考にしたし、過去にも同著を参考にしたエントリーというのは何度か書いている。