そろそろネット住民の反パチンコ論についてひとこと言っておくか
はてなでは定期的にパチンコに関する話題が注目を集め、大挙して押し寄せたブックマーカーたちが、口々に社会悪たるパチンコ業界に対する怨嗟の声を漏らすというのが恒例行事になっている感がある。
< ビンボーの 原因は パチンコ >
韓国でパチンコが禁止となったニュースを報道できない日本のマスコミ - なおすけの都市伝説と雑学
404 Blog Not Found:国辱 - 書評 - なぜ韓国は、パチンコを全廃できたのか
いつもは口汚く罵り合っているはてなーたちも、ことパチンコの話になると異様な連帯感をみせ、ネトウヨも(パチンコ産業を完全に排除したという)韓国に倣えと言い出し、はてサヨも権力による規制に賛成し、自己責任論者もパチンコ中毒者の肩を持つ。まさに圧巻なわけである。
パチンコ愛好家はただのバカか?
反対論者の論には、邪悪なパチンコ業界と、それにだまされ搾取されていることにすら気付かない弱者たちという非常に単純な構図が透けて見えるが、これは単純にパチンコ愛好家をバカにしているとしか言いようがない。
常識的に考えて、パチンコをする人にも何らかしらの動機があるに決まっている。彼らはパチンコによって何らかの欲求なり衝動なりが満たされると思うから、パチンコをするのだ。まったくもって当たり前の話過ぎて申し訳なさすら覚えるが、パチンコをする人とパチンコ屋の関係は、単純に需要と供給の関係なのであって、小作農と封建領主のような関係ではない。パチンコをする人のそもそものところにある動機も考えず、ただひたすらパッと見の印象で搾取だ陰謀だと噴き上がる様は、見るも無惨である。
パチンコはコミュニティサービスである
少し前*1、それなりの頻度でパチンコ屋に通っていた経験がある。回数を重ねるにつれ、徐々に常連客のような方々が話しかけてくださるようになった。私は生粋の人見知りなので交友はご遠慮させていただいたが、私の友人などは割と仲良くしていたようだった。
曰く、常連客にはいくつかの派閥があり、派閥内にはリーダー的な人もいるのだそうだ。そして、同じ派閥の中では、その日勝った人が派閥の仲間にコーヒーを振る舞うなど、頻繁にコミュニケーションの機会が持たれ、今日は誰が来ていて何回当たったとか、来てない人はどこそこに行っているとか、そういう話をのべつ幕なしにしているのだそうだ。要するに学校の教室と同じである。
専業主婦のように学校を卒業したあと仕事をしていない人や、仕事はしていたとしても例えばトラックの運転手のように他人と接する機会があまり多くない仕事に就いている人は、学校や会社のような特定のコミュニティに属して日々を過ごすという経験に乏しい。そしてそれはおそらくとても寂しいことだと思う。だから多くの人はパチンコに行くのではないか。パチンコのように結果が定量的に把握できるゲームは、コミュニティの軸として非常に優れていると思う。
パチンコをすると、脳内でエンドルフィンという物質が分泌され、これが中毒症状の要因になるのだという。こうした科学的な事実をもってしてパチンコを薬物に喩える向きもあろうが、エンドルフィンは基本的には自分が他人から良く思われていると感じた時に多く分泌されるものであり、このことはパチンコがコミュニティの軸にあたるものだということを裏付ける。つまり、パチンコで大当たりを引くというのは、小学校の運動会においてかけっこで一番になり、クラスの人気者になることと一緒だということだ。
パチンコは暴利か
実は以下の通り、パチンコ遊技機器が1分間に打ち出す球数は100球と決まっている。
(1) 性能に関する規格
遊技機の認定及び型式の検定等に関する規則 条文 | 法なび法令検索
イ 遊技球の発射装置(以下この表、別表第6及び別表第7において「発射装置」という。)の性能に関する規格は、次のとおりとする。
(イ) 遊技球を1個ずつ発射することができるものであること。
(ロ) 1分間に100個を超える遊技球を発射することができるものでないこと。
(ハ) 遊技球の試射試験を10時間行つた場合において、(イ)及び(ロ)に掲げる性能が不変であるものであること。
(ニ) 遊技球の試射試験を10時間行つた場合において、その間、遊技盤上の遊技球の位置を確認し、かつ、調整することができるものであること。
そしてパチンコの玉は1球につき大体が4円、還元率は概ね90%前後*2であることが一般的だそうだから、理論上1時間当たりの単価は2400円ということになる。決して安くはないが、特別高いとも思わない。キャバクラにでも行こうものなら、同じ時間で2倍も3倍もの料金がかかる。最近では、市場の減退を受けて新たな客層を開拓することに躍起になっているパチンコホールが、1円パチンコなるものも打ち出しており、これであれば単価は一気に4分の1になるから、1時間当たり600円である。このくらいになると、普通のゲームセンターとあまり変わりないのではないか。
パチンコ叩きの性根
パチンコ叩きの性根は、先般のエロ漫画規制に絡んで無駄に差別発言を連発していた某東京都知事とまったく同じである。要するに自分に理解できない価値を無価値だと断じているわけである。無価値なものを無価値ゆえに差別して排除するか、無価値なものを利権のために横行させているなどとしておかしな陰謀論の権力批判として辻褄をあわせるかだけの違いだ。
根本的な動機を理解しようという気はまったくない。パチンコを取り上げて、彼らはどうなる?幸せになるのだろうか?酒もタバコもやり過ぎは体に良くないが、節度を持って楽しめば人生に彩りを与えてくれるものだと思ってる。そういうものも含めて何でもかんでも浄化して、無菌室みたいにすることが本当にいいことだと思うだろうか?
ネット住民は極端なのだ。自分たちが大好きなエロ漫画が規制されるかもという事態となれば、表現の自由などと一見崇高な概念を持ち出してまで、権力の暴走を許すなともっともらしく口角泡を飛ばす一方で、パチンコ業界のようなパッと見で怪しい業界には我を忘れて牙をむき、勢い余って規制による廃絶を唱える。そうではなくて、なにごとも真ん中くらいが一番いいわけである。