検察の主張こそ疑ってかかるべき

例の民主党小沢代表の秘書が逮捕された政治献金の話について、3年前のライブドア事件と似た雰囲気を感じる。検察が暴走している可能性はないのだろうか。

ライブドア事件の概要

最近はなんだかホリエさんの露出も増えているし、ついでなのでまずはライブドア事件の概要を振り返りたい。以下は適当に検索して見つけたページからの引用だが、起訴事実としては大体以下の通りだろう。

 ■有価証券報告書の虚偽記載

 ■偽計・風説の流布

ライブドア事件公判の起訴事実要旨

4つある。(1)株式交換を利用した自社株売却益の還流。(2)(後の)子会社からの架空発注。(3)グループ再編における価格算定に関する虚偽記載。(4)子会社への架空発注。1と2が連帯して有価証券報告書の虚偽記載(金融商品取引法*1第157条違反)を構成し、3と4がん連帯して偽計取引金融商品取引法*2第158条違反)を構成している。

ライブドア事件の論点

初っ端が一番複雑だが論点だけ先に言うと、簡単に言えば事件の中心となったファンドについてライブドアが実質的な支配権を持っていたかどうかであった。少し説明すると、まずライブドア株式交換*3によって会社を買収する。そのままだと、新規に発行されたライブドア株が、被買収会社の元の株主(売主)のところにいく。ところが、売主はリスクのある株式よりも、確実な現金での支払いを望むことがある。買主は買主で十分な現預金の残高がない場合は株式に頼らざるを得ない。この場合、売主に渡る株式を買い取るファンドや金融機関と予め話をしておき、株式交換の実行とほぼ同時に売主には現金が渡るようにすることがある。ライブドアは、この株式を買い取るファンドを自ら売主に対して紹介し、かつ同ファンドに出資を行っていた。ファンドへの出資は、ライブドアの子会社である金融子会社から行われていたので、ファンドへの出資金の回収は、当然同子会社の売上として計上される。当然同子会社はライブドアの連結対象だから、ライブドアの連結決算でもファンドの運用益が売上になることになる。ところが、本来自社株式の売却に関る損益は、会計上、売上などの損益勘定ではなく資本勘定として処理されなくてはならないことになっている。

かくして問題は、ライブドアの金融子会社にとってのファンドの運用益が、本当に純粋な運用益なのか、それとも実質は単なる自社株の売却益なのか、という点になる。外形的には、ファンドの運用は他者に委託されているわけだから、ファンドの運用益はどこをどうひっくり返してもファンドの運用益に過ぎない。繰り返すが、これは形式的にはまったく問題のない取引である。しかし検察側の言い分としては、同ファンドは”実質的”にライブドアの支配下にあり、本来であれば子会社として連結すべきものだということであった。もしファンドが子会社の扱いになるのであれば、一連の取引から生じる損益は自社株の売却であって、資本勘定に他ならない。そして、にもかかわらずこれを売上として計上しているのは決算を粉飾し投資家を騙し株価を不正に吊り上げる意図があったのであって・・と繋がっていく。もしこの点についてどう考えるかと問われれば、これは明確なグレーゾーンだろうという言い方になる。”実質的”の基準がよくわからない限りにおいて、形式的な関係性を重視して記載するのはそんなにおかしなことであるはずがないからだ。

次に2について言えば、そもそもその”後の子会社”とやらからの売上を計上したことは間違いないのだろうから、論点はその取引が実体のあるものであったか否かという点になる。実体がないにもかかわらず、さも取引があるかのように偽って決算を誤魔化せば、それは確かに立派な粉飾である。これについては、おそらくどのような契約に基づいて、どのような成果物が納品され、どのように検収がなされたのか、という点が争点になるのだろうが、上記1などと比較すれば遥かに白黒付きやすい取引なのであって、起訴に及んだという事実でほぼ黒と見て間違いないだろう。論点があるとすれば、子会社であればどうせ連結対象なのだからどちらにどう売上・利益をつけようが投資家にとって何の影響もなかろうという主張だろうが、だからこそわざわざ”後の”と明示して、実際の子会社化のタイミングが決算期をまたいでいることをアピールしているのだと思う。

3つめ。問題となっている取引は、ライブドアの子会社であったマネーライフを、同じくライブドアの子会社で上場していたライブドアマーケティングがこれも上記1同様株式交換の手法により買収したという取引である。検察側の主張は、要はこの買収においてマネーライフ社の企業価値が不当に高く見積もられており、それによってライブドアは本来より多くのライブドアマーケティング社株式を取得し、それを市場で売却することにより利益を貪ったということのようである。そして、この一連の取引に際して、実際は”実質的”に支配関係のある算定機関に実体よりも高い企業価値を算定せしめたにも関らず、開示の文書では「第三者機関」と記載したのでこれは虚偽だと、こういう寸法だ。加えて、なぜか上に引用したサイトには記載がなかったが、ライブドアマーケティングはマネーライフの買収の確か少し後のタイミングで、株式の100分割を実施している。要は、このあたりも含めて全部出来レースだろというのが検察の主張で、だからこそ単なる虚偽記載だけではなく、偽計取引という少し複雑なスキームが採用されているのだと思う。

これについての論点は3つで、ひとつはマネーライフの企業価値は不当に高く見積もられていたか、そしてその不当な価値算定の背景にはライブドアと算定機関の間における支配関係があったのか、それから一連の取引は相場を操縦し、自己が利益を得ることを目的とした出来レースだったのか。まず企業価値について言えば、非上場会社の企業価値算定というのは、基本的に相当難しい。公的な算定などでは便宜的に会社の純資産額などを援用するケースが多いが、一般的な取引ではそれでは価格が折り合わないことが通常なため、結論としては相対取引という前提のうえで、かなり自由な金額で取引されているというのが実体である。であれば、ある非上場会社の企業価値が不当に高いことを立証するのはほぼ不可能である。不当に高い取引履歴は山のようにあるから、それを援用すれば理があるのは間違いなく被告側である。算定機関との支配関係について言えば、これは突き詰めれば1の件同様グレーだとしか言いようがない。最後に「出来レース」については、これもおそらく検察側がいかに入念に立証しようと難癖くささが抜けきらない主張のように思う。というのは、株式を分割し決算を粉飾したところで株価が上がるとは限らないからだ。粉飾の影響については追って説明するとして株式分割についていえば、確かに株式分割をすると一時的に株価が上がる。これは統計的な事実と言ってよいだろう。しかしこれには理由がある。株式を分割するとつまり市中に流通する株券が増える*4ことになるのはわかると思うが、旧制度においては、この株式の分割と株券の流通までに時差があった。もともと10株あったのが100分割して1000株になるケースだと、株式は分割され取引金額は1/100に下がったにも関らず、990株相当の株券が流通しておらず、この990株分の売却ができない時期が2週間くらいあった。そうするとその2週間の間は買う方はいくらでも注文できるのに、売るほうがまったく売れなくなるから、完全に需給のバランスが崩れて株価が高騰すると言う現象がそこかしこであったのだ。ただ、仕組みがわかればご理解いただける通り、理論上、株価が高騰するのは株式が売れない間だけである。分割後株券が普通に流通を始めればまた普通に適正の値に戻ると言うのが普通に考えればわかるだろう。株価は確かに騰がるかもしれない。だがほんの僅かしか*5売れないのだ。出来レースと言うほどなのだろうか。

最後は、実質的には2と同じである。2でライブドアは(後の)子会社から架空の売上を引っ張ってきたが、4で今度は別の子会社に対して架空の売上をつけてやったのだ。連結対象の子会社に多少売上をつけたところで、あまりうるさく言われる筋合いはないだろうと言うのが本音としてはあるが、そうは言ってもその子会社が上場していれば話は別で、子会社の株価を維持することが直接親会社の資産価値を維持することにつながるわけだから、グループ間とはいえども利益を計上する場所を慎重に検討することについての経済合理性、つまり動機は十分にあることになる。しかも、上場会社であれば当然親会社以外の株主もいるわけで、それら株主として、短期的には株価が上がるから吝かでない面もあるかもしれないが、特に長期的に考えれば実力に合致しない収益をもとに投資検討させられるということは、あるまじきことである。これも上記2と同様、黒だと考えて差し支えないだろう。

ライブドア事件の妥当性

以上より言えることは、ライブドアは白か黒かで言えば黒だということ。確かにグレーな部分も多いが、黒の部分もあるのだから全体としては黒ということで特に間違いはないだろう。よって、基本的に検察による起訴自体は、極めて正当なものだと考える。

ただし、正当性と妥当性はまた別だ。2006年1月16日月曜日、まだ証券市場も開いている日中に、NHKがやや先走り気味にライブドアへの強制捜査を報道し、同日夜にはそれが現実となった。大きな市場の混乱と共に幕を開けたこの事件は、その後当時の経営陣から5人もの逮捕者をだし、会社は証券取引所上場廃止となり、最終的には解体に追い込まれるに至った。5人の経営陣のうちで最後に逮捕された熊谷氏は、事件があったとされる2004年当初まったく役員などの重責にはおらず、入社数年目、20台の若手社員だった。少なくとも彼を逮捕したことに、私は微塵の妥当性も感じていない。また、同じく逮捕されている中村氏も、ライブドアの役員ではない。100%子会社の代表である。果たしてあの規模の企業グループにおける100%子会社の代表に、事件を主導するほどの裁量権があるとお思いだろうか。彼らは執行猶予こそ勝ち得ているものの、立派な有罪判決を被っている。

ライブドア事件の少し後にあったので、よく比べられることが多かったように思うが、日興証券の粉飾はライブドアの3倍以上の規模だった。やり口だって同じようにファンドを活用した、まさに類似の事件である。日興は日本の三大証券の一角として公正かつ健全な市場運営に責任を持つ身だったのだから、よほどたちが悪いとも言えるだろう。しかしながら、こちらの事件では逮捕者はなんとゼロ名。シティグループに完全子会社化されるまでの間は、ノウノウと上場までしていた。どちらが妥当なのかは知らないが、ここまでの差はさすがに妥当ではないだろう。


まあこれは邪推の域をでないわけだが、ホリエさんも言うように、検察側はもともとはもっと大きな事件の影的な何かを勝手に感じていたのではないだろうか。検察に垂れ込んだ証人が、あることないこと吹聴したのを本気にしてしまっただけかもしれない*6。ところが、期待で胸を膨らませていざ強制捜査に入ったものの、あまり大粒な事件が出てこない。しかも結構グレーな部分が多くて、ホリエさんの自白がないと結構厳しいかもしれない。あれだけ大掛かりに報道して、株価も大暴落させておきながら今更何にもありませんでしたというのは検察の威信にかけてできない。仕方ないから小粒な事件をいくつかつないで、合わせ技一本という技巧面に逃げつつ、関係者を不自然なまでに次々と逮捕してホリエさんにプレッシャーをかける*7という策に走ったのではないのだろうか。

捜査に入るのも良いし、違法なものを違法と言うのも当然よろしい。ただ、意地になって立件にこぎつけようとしたり、わざわざ注目を集めるようなやり方をするのは権力の乱用だし、そもそもどういった目論見で捜査に入るかは開示されて然るべきだろう。それらがなされない限り、なんとなく気に入らないところに捜査に入って、無理やり立件しているという可能性が払拭できない。

確かにそこまでの権力の私物化があるとは少し考えづらいが、こんなことが続けばいつか勘違いした検察庁が私欲に走らないとも限らない。そしてそれだけは決してあってはならないことだと思う。だから一市民としては、こういう問題についてはきっと心配性なくらいが丁度いいのだと思っている。

民主小沢代表秘書逮捕事件

さて、前置きが相当長くなってしまったが、私は今回の小沢氏の件を見ていても、どこか似たような雰囲気を感じている。

本件の論点は、言わずもがな小沢氏の個人資金管理団体である”陸山会”への寄付が企業献金か否かである。企業から政治家個人への寄附行為は、政治資金規正法で禁じられており、もしそれがなされていたとしたら明確な違法行為である。今回小沢氏個人に対して企業献金をしたのではないかと言われているのが西松建設だが、当然西松建設が直接寄付をしているわけではない。政治団体を迂回させているとのことだ。つまり、上記ライブドアの事件と同様、形式的な寄附行為者はその政治団体であるが、”実質的”には西松建設からの企業献金なのであってそれは脱法行為であるというのが、今回の検察側の主張なのだろう。現行の報道だけを見ていると、あたかも論点はここだけに絞られているように見え、報道の関心は検察がどのような証拠を掴んでいるかのみに向けられているかのように見える。

上で検察の挙動については、いちから疑ってかからなければなるまいと書いた手前、まずはこの論点から疑うべきだろう。

政治資金規正法

関連する法律の条文を見ておこう。すべて『政治資金規正法,(略)政資法』からの引用。
まず、政治団体とはなにか。本件においては西松建設側も小沢氏側も政治団体である。

第3条 この法律において「政治団体」とは、次に掲げる団体をいう。
1.政治上の主義若しくは施策を推進し、支持し、又はこれに反対することを本来の目的とする団体
2.特定の公職の候補者を推薦し、支持し、又はこれに反対することを本来の目的とする団体
3.前2号に掲げるもののほか、次に掲げる活動をその、主たる活動として組織的かつ継続的に行う団体
  イ 政治上の主義若しくは施策を推進し、支持し、又はこれに反対すること。
  ロ 特定の公職の候補者を推薦し、支持し、又はこれに反対すること。

ちなみに、政治団体となるためには届出だけで可能らしい。

第6条 政治団体は、その組織の日又は第3条第1項各号若しくは前条第1項各号の団体となつた日・・から7日以内に、・・文書で、その旨、当該政治団体の目的、名称、主たる事務所の所在地及び主としてその活動を行う区域、当該政治団体の代表者、会計責任者及び会計責任者に事故があり又は会計責任者が欠けた場合にその職務を行うべき者それぞれ1人の氏名、住所、生年月日及び選任年月日、・・その他政令で定める事項を、・・選挙管理委員会又は総務大臣に届け出なければならない。*8

企業が、特定政治家の資金管理団体に寄附してはならないという根拠は以下。但し、政治団体であれば寄附してもよいとわざわざ書いてある。

第21条 会社、労働組合労働組合法(昭和24年法律第174号)第2条に規定する労働組合をいう。第3項並びに第21条の3第1項及び第2項において同じ。)、職員団体(国家公務員法(昭和22年法律第120号)第108条の2又は地方公務員法(昭和25年法律第261号)第52条に規定する職員団体をいう。第3項並びに第21条の3第1項及び第2項において同じ。)その他の団体は、政党及び政治資金団体以外の者に対しては、政治活動に関する寄附をしてはならない。
《改正》平11法159
2 前項の規定は、政治団体がする寄附については、適用しない。

さて、今回小沢氏の秘書が逮捕された件の根拠条文は、おそらく以下。寄附があったときは、その寄附をした団体の名称、主たる事務所の所在地及び代表者の氏名、当該寄附の金額を帳簿に記載せよと。

第9条 政治団体の会計責任者(会計責任者に事故があり、又は会計責任者が欠けた場合にあつては、その職務を行うべき者。第15条を除き、以下同じ。)(会計帳簿の記載に係る部分に限り、会計責任者の職務を補佐する者を含む。)は、会計帳簿を備え、これに当該政治団体に係る次に掲げる事項を記載しなければならない。
1.すべての収人及びこれに関する次に掲げる事項
  イ 個人が負担する党費又は会費については、その件数、金額及び納入年月日
  ロ 寄附(第22条の6第2項に規定する寄附を除く。以下ロ及び第12条第1項第1号ロにおいて同じ。)については、その寄附をした者の氏名、住所及び職業(寄附をした者が団体である場合には、その名称、主たる事務所の所在地及び代表者の氏名。次条第1項及び第2項並びに第11条第1項第1号ロにおいて同じ。)、当該寄附の金額(金銭以外の財産上の利益については、時価に見積もつた金額。以下同条までにおいて同じ。)及び年月日並びに当該寄附をした者が第22条の5第1項本文に規定する者*9であつて同項ただし書に規定するものであるときはその旨

ちなみに罰則については以下。

第24条 次の各号の一に該当する者(会社、政治団体その他の団体(以下この章において「団体」という。)にあつては、その役職員又は構成員として当該違反行為をした者)は、3年以下の禁錮又は50万円以下の罰金に処する。
1.第9条の規定に違反して会計帳簿を備えず、又は同条、第18条第3項若しくは第19条の4の規定に違反して第9条第1項の会計帳簿に記載すべき事項の記載をせず、若しくはこれに虚偽の記入をした者

検察側捜査の妥当性

上記でいくつか引用した法律を見る限り、いかに資金拠出者が西松建設であろうと、いかに西松建設の影響力が強かろうが、実際に寄附をしたのがしっかりと届けられた実体のある政治団体なのであれば、小沢氏側の帳簿記載はまったく間違ってはいないのではないだろうか。明確に政治団体であれば寄附しても構わない旨が示されているし、寄附金を拠出した者ではなく寄附をした者を書けとも書いてある。実質的な基準の存在をにおわせる部分も皆無である。当然、この政治団体がまったくのダミーで、何の実体もなく、かつそれを小沢氏も知っていたとなればさすがに問題だろうが、逆に言えば問題の西松側政治団体がそれなりの政治活動さえしていれば、問題はないのではないだろうか。少なくともそういう法律になっているのではないだろうか。上述したライブドアの件は、”実質的”基準でなんとか押し切れた格好だが、今回の件はあれよりさらに厳しいのではないか。”実質的”な資金拠出者など、そもそも論点にすらならない可能性がある。その政治団体に”まったく”実体がないこと、及び小沢氏側がその事実を知っていたことを、検察側は完全に立証する責任があるように思うが、普通に考えてこれらはとても難しいことのように思える。

また、そもそも会計帳簿の記載方法を間違えただけで、いきなり逮捕と言うのも実に穏やかでない。裏献金を隠したなどの話であればわかる。単に記載が実体と異なるという話なのであれば、直せと言えばいいのではないのか。おそらくこの法律、政治資金の透明性を高めることが目的だろう。少なくとも総収入と総支出が実体に則したものとなっている範囲において、本法による最低限の要求には応えていると考えることはできないだろうか。上記で引用した帳簿の記載方法などを見るに、この法律はそんなに厳しいものではない。帳簿の記載も”誰からいくら”程度で、企業会計と比べたら、その足元にも及ばない内容だと思う。何故この程度の内容なのかといえば、これはおそらくそもそもの政治家のドンブリ勘定ぶりが激しく厳しくしてもむしろ逆効果だろうと考えたからということでなければ、別に企業のように投資を仰ぐわけではないのだからそんなに細かく律する必要がそもそもないということではないか。であれば、今回の企業献金を政治団体名義で受け入れてしまいましたでもちゃんと帳簿には書いてますという事例は、法の趣旨に照らせば「大したことない事件」であるとしか思えない。

今後の展開について

私の印象では、この程度のことで政治家秘書を逮捕し、これだけの事件をつくりあげることが出来るのであれば、東京地検特捜部は理論上いかなる政治家でもしょっぴくことが出来ることになる。当然政治家に限定する必要はなく、事実上すべての日本人について可能になるだろう。

検察がそうした危うい方向に歩み始めていないということを実感し、我々が安心を手にするためには、この事件の帰趨はしっかりと見守っていかなければならないだろう。

もし、小沢氏には大きな余罪があり、かつ検察側は十中八九それを掴んでおり、本件はそれを完全に立件するための入り口に過ぎないという話しに展開するのであれば納得感があるが、もしまた結局既に明らかになっているもののような細かい犯罪いくつかを適当に細工して、まるで取って付けたような大きな物語を捏造して起訴するようなことがあれば、我々は声を大にして抗議しなくてはならないと感じる。それは絶対にあってはならないことだと思う。

検察と被疑者。検察はまるで私たちの代表のような顔をしているが、彼らはただの権力である。村上春樹風に言えば検察が「壁」で被疑者が「卵」なのであって、我々個人は「壁」に味方するべきではない。

追記

妙に長くなってしまったが、この辺の大御所がたと完全に被ってる感じか。
toroneiさん、それは本当に違うんだよ - finalventの日記
民主党をやっつけるのに検察の手を借りなきゃならないようじゃ日本はおしまいだ - アンカテ

小沢さんの件で大手ゼネコン4社からの迂回献金で大延焼: やまもといちろうBLOG(ブログ)」はちょっと違う感じ。この人って確かライブドア事件のときも結構最初からずっと、暴力団や旧ベンチャー協議会の面子などを絡ませながら「まだまだ出るぞ」的なことを言い続けて最後は尻すぼみになっていた気が。きっとそういう裏事情的な雰囲気が好きなんだろうな。

追記2

以下に続きを書いた。民主党側の対応もかなりイケテないよねという。あわせて是非。
お前がそれを言うな - よそ行きの妄想

追記3

いろいろと下のコメント欄でやり取りさせていただく中で気がついたのだが、今回の件は上述した政治資金規正法9条の違反の件ではなくて、下記第22条の問題なのかもと思い至った。

22条の6 何人も、本人の名義以外の名義又は匿名で、政治活動に関する寄附をしてはならない。
2 前項及び第4項の規定(匿名寄附の禁止に係る部分に限る。)は、街頭又は一般に公開される演説会若しくは集会の会場において政党又は政治資金団体に対してする寄附でその金額が千円以下のものについては、適用しない。
3 何人も、第1項の規定に違反してされる寄附を受けてはならない。

政治資金規正法,(略)政資法

この場合、主眼がどちらかと言うと、小沢氏ではなくてゼネコンの方になりそうなので、話としては少し変わってくるかもしれない。ただ、ゼネコンの相手側に小沢氏を持ってきたことに果たして恣意性はないのかというのはやっぱり注視したい。

*1:証券取引法

*2:証券取引法

*3:買収の際の対価を自社の株式で支払う。支払われる株式は新規に発行される場合もあるし、買収会社が自己株式を有している場合はそれが充てられる場合もある。

*4:乱暴に計算すると2分割なら2倍に、100分割なら100倍に。

*5:厳密には保有株式の1/100が限度。

*6:永田メールの例もあるし、何の得もないのにただホラを吹く人というのはいる。

*7:普通に考えれば、何でも白状するから部下は捕まえないでくれというのが大将のあるべき姿である。

*8:「・・」表記は省略部分。

*9:外国人・外国法人に関する規定